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第240話

(秋哉side) 緋桜が倒れてから数時間後、緋桜は一度目を覚ました。 少しだけ話をしたけど、まだボンヤリしててまともに話が出来ないと思ってそのままもう一度寝かせた。 しばらく緋桜の頭を撫でてると、緋桜はまた寝息を発て始めた。 俺は緋桜が完全に寝たのを確認して、そっと部屋を出た。 「秋哉、緋桜くんの様子はどうだ?」 リビングに行くと、佐々木が居てそう聞いてくる。 「一回起きたけどまた寝た」 佐々木は『そう』とだけ言ってキッチンの方に消えていった。 俺はソファに座って背凭れに凭れ掛かると、大きくため息をついた。 今度は何が原因なんだろう。 緋桜にはまだ俺が知らないトラウマがあるのかな。 「ほら、そんな考えてても仕方ないだろ」 そんな事を考えながらボーっと天井を見上げてると、いきなり額を叩かれた。 「痛い」 叩かれた額を押さえてそう言うと、佐々木はクスクスと笑いながら飲み物の入ったカップを差し出す。 「ほら」 「……ありがと」 そう言って俺は差し出されたカップを受け取った。 一口飲んで息を吐く。 「お前が悩んでても仕方ないだろ、明日緋桜くんに聞いてみればいい」 佐々木も飲み物を飲みながらそう言う。 「……話してくれるかな?」 「緋桜くんも変わってきてる。気持ちを内に閉じ込めてた前とは違う」 『聞けばちゃんと答えてくれると思うぞ』と佐々木は言う。 確かに、緋桜はまだ言葉足らずのとこはあるけど、自分の気持ちを少しずつ言えるようになった。 俺は必死に気持ちを伝えようとする緋桜の姿を思い浮かべてフッと笑う。 「……そうだな」

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