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第249話

(佐倉side) 「いや~俺、こいつらの事甘く見てたわ」 「そうだね、普段でも結構甘めだと思ってたけど、それ以上とは俺も思わなかったよ」 朱春も何処か遠い目しながら呟いた。 「そう?微笑ましいじゃない」 翠はそう言いながらニコニコと笑っていた。 「いやいや、微笑ましいってレベルじゃないだろ、あれ!!」 そう言って俺はキッチンでイチャついてる二人を指差した。 二人が買い物から帰って来て、中村が料理を始めた。 中村が何かを切り始めた途端、『痛っ』と聞こえてきて秋哉が飛んでった。 どうやら指を切ったみたいで、秋哉が中村の指を咥えて傷から出た血を舐め取った。 その後は秋哉も手伝うと言ってキッチンに立った。 で、俺らはオムライスが出来るまでの間、ラブラブな新婚夫婦みたいな光景をずっと見せられていた。 「で、でも中村くん、笑顔が増えたよね」 朱春が話題を変えるかのように言う。 まぁ確かによく笑うようになった。 っていってもまだ微笑むくらいだけど。 それも秋哉が側にいるからか…… そう思うとちょっとはあの光景も微笑ましいのかな。 ………って思った俺がバカだった。 「…秋哉、これどう?」 中村は出来上がったものをスプーンに取って秋哉の口に運ぶ。 秋哉は躊躇することなくそれを食べる。 「ん、大丈夫美味しいよ」 と秋哉が感想を言うと、中村は見たことないような笑顔を秋哉に向けた。 「お前らいい加減にしろ!!」 流石に我慢の限界で思わず叫んでしまった。 その瞬間、キッチンにいた二人の体がビクッと揺れる。 「何ですか!?急に叫んで」 秋哉は驚いたような顔をしながらそう言う。 中村は急に叫んだ俺に不安そうな顔を向けていた。 中村を驚かせてしまったのは悪いと思う。 悪いと思うが! 「お前ら、さっきからイチャイ……ムグッ」 俺が二人に文句を言おうとすると、朱春に口を塞がれた。 「すいません、気にせず続けて下さい」 そう言って朱春は笑う。 「二人ともごめんね~」 翠も二人に謝ると、二人がかりで俺を部屋の角まで引き吊っていった。 秋哉と中村はそんな俺を訳が分からないとでも言うような顔で見ていた。 「っ!何すんだ!」 俺の口を塞ぐ朱春の手を外してそう言うと、もう一度口を塞がれた。 「バカ、二人の邪魔してどうするの!」 「そうだよ!気持ちは分かるけど、我慢しなきゃ!」 そう言ってすごい顔で翠と朱春が迫ってくるから、俺は二人の気迫に負けてコクコクと頷いた。 チラッとキッチンを見ると、二人はまたオムライス作りに戻ってた。 しかも何事も無かったように、またイチャつきながら。 秋哉は元から中村を甘やかしたいって言ってたし、中村も秋哉に甘えるのは大分感情が表に出るようになってきた証拠なんだろう。 それは良いことではあるとは思うんだけどな。 ただ中村の場合、今までそうしてこなかった分、その度合いが分からないんだろう。 ましてや、甘えた分だけ秋哉が受け止めてしまうから余計に。 俺はもう一度二人を見る。 二人はぴったりくっついて、何か話したり、たまに触れたり。 秋哉は意図的なとこがあるけど、中村は完全に無意識でやってる。 中村がああやって接するのは秋哉限定だけど、無意識怖いわ。

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