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第252話

家に帰ると、先に秋哉が中に入る。 「お帰り」 秋哉に続いて中に入ると、秋哉にそう言われた。 俺は一瞬、その言葉の意味が分からなかった。 「…え…ぁ…」 言葉に詰まると、秋哉がクスッと笑う。 「こういう時は"ただいま"だよ」 『もうここは緋桜の家なんだから』と秋哉は言う。 秋哉にそう言われて、改めて『あ、俺はここに住むんだ』と思う。 前にも秋哉に『お帰り』と迎えてもらったことはあるけど、やっぱりちょっと不思議な感じ。 それにちょっと照れくさい。 なかなか言えないでいると、秋哉に『ほら』と促される。 「………だた、いま」 「うん、お帰り」 秋哉はそう言うと、ニコッと笑った。 その後は完全佐々木さん作の夕飯を食べた。 その時秋哉は、何で気付かなかったんだろうと言って首を傾げてた。 秋哉いわく、俺と佐々木さんとでは味が違うらしい。 佐々木さんに教えて貰って、同じように作ってた筈なのに何でかな。 でも秋哉がまた食べたいって言ってくれたから、また作ってもいいと思った。 「なに笑ってるの?」 ベッドに座ってると、風呂から上がって戻ってきた秋哉にそう言われる。 どうやら無意識に笑ってたみたい。 「……昼間の事、思い出してた」 そう言うと、秋哉は『あぁ』と納得する。 「自分が作ったもの、人に食べてもらって、感想言われたの初めてだったから」 「俺も緋桜が作ったものだって知ってたら感想言ったよ?」 秋哉が少しムスッとした感じで言う。 俺が作ったものだって知らずに食べてたことをまだ根に持ってるらしい。 「……ごめん」 言うほどでもないと思ってたから、ここまで怒るとは思わなかった。 言えば良かったと今更後悔する。 そう思ってると、秋哉からクスクスと笑い声が聞こえてきた。 「ウソ、怒ってないよ」 そう言って秋哉が俺の頭に手を乗せた。 「でもこれからはちゃんと言ってね。緋桜が作ったものを知らずに食べてたって嫌だから」 そう言われて、俺は頷いた。 「それより…」 秋哉がそう言うと、いきなり体をトンと押される。 対応出来ずに俺は、されるがまま押し倒された。 ベッドに倒れ込んだ俺に秋哉が乗っかってくる。 「緋桜がここに住むってことは、今日が初夜ってことだよね?」 そう言って秋哉がニヤッと笑った。

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