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第263話
(秋哉side)
『さあやって参りました!第○回体育祭!
皆さん張り切って競いましょう!!』
と陽気な放送委員の声が響き渡る。
俺はその声とは逆に憂鬱で仕方なかった。
あの後色々聞き回ったけど、結局何も分からないまま当日になってしまった。
問題の障害物走はプログラムによると午後からの4番目。
流石に今から阻止するのは難しい。
もう何事も無いことを祈るしかない。
「なーに浮かない顔してんだよ!」
そんな事を考えていると、いきなり後ろからバシッと背中を叩かれた。
振り返ると佐倉先輩がニヤニヤしながら立っていた。
「……誰のせいだと思ってるんですか?」
俺がそう言うと、先輩はケラケラと笑う。
「そんな心配しなくても大丈夫だって!」
そう言って笑う先輩に、俺は不信感しかなかった。
ここは生徒会専用の席。
そこからはグラウンド、生徒たちの席、観客席が見渡せる。
何かあったときにはすぐに対処出来るように用意された席だ。
……っていうのは表向き。
実際は生徒会全員が揃ってる所を見せ物にするための席。
生徒会は毎回、前生徒会の推薦方式で選ばれるから、当然注目されてる人が選ばれる。
それもあって、生徒会は全生徒の注目の的だ。
しかも全員が揃って見れるのは、こういったイベントの時くらいしかない。
今も遠巻きにキャアキャア言ってる生徒たちがいた。
「いつまで暗い顔してるんだよ」
未だに気乗りしない俺を見て、佐倉先輩が呆れたように言う。
「……先輩が余計なことをしなければ、俺も楽しめましたよ」
「それじゃつまんないだろ?」
『俺が』と言って笑う先輩に、俺はため息しか出なかった。
「………俺で遊ばないでください」
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