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第266話
(秋哉side)
体育祭が開会したら、俺たち生徒会は大忙しだ。
競技の準備の指示出しに最終チェック、出場選手のチェックに会場の見回り。
俺たち自身も競技に出場するから、それまでの段取りも考えなきゃいけなかった。
『100M走に出場する人は集合してください』
そう放送が流れる。
「緋桜、確か100M走出るんだったよね?」
そう聞くと緋桜は頷く。
ただ緋桜はどこか浮かない顔をしていた。
「…もしかして緊張してる?」
俺がそう言うと、緋桜は表情が更に強張った。
「……俺、こういうの初めてだから」
『ちゃんと出来るかどうか』と言って緋桜は更に俯いてしまう。
俺はそんな緋桜の頭に手を置いた。
「大丈夫、普通に走ればいいんだよ」
そう言って俺は緋桜の頭をグシャグシャと撫でた。
「おーいお前ら!イチャついてないで秋哉は仕事しろよ!中村はあっち!」
俺が緋桜の頭を撫でていると、佐倉先輩に引き離される。
緋桜は先輩に集合場所の方に追いやられていた。
緋桜は不安そうな顔で俺を見てくる。
「緋桜、大丈夫だから!楽しんでこい」
俺がそう言うと、緋桜は小さく頷いた。
それでもやっぱりちょっと気になって緋桜を見てると、緋桜は先輩にも何か言われてるみたいだった。
でもその後緋桜は、少し笑顔になってたからもう大丈夫かなと思って俺は自分の仕事に戻った。
100M走、緋桜は一位でゴールした。
て言うより、緋桜は二位以下を引き離してぶっちぎりだった。
今までが緋桜自身あまりこういう行事に参加してこなかったから目立たなかったけど、緋桜はかなり運動神経がいいと思う。
競技を終えて緋桜がこっちに戻ってこようとする。
でもその途中で他の生徒たちに囲まれてしまった。
完全に囲まれてしまった緋桜はすごい慌ててる。
その様子を見て俺は思わず笑ってしまった。
「お前はいつも中村を見てるんだな」
そう後ろから声を掛けられる。
見ると佐倉先輩が少し呆れ顔で立ってた。
「当たり前じゃないですか、むしろ緋桜以外何を見ろと?」
「お前も大概だな」
そう言って先輩は笑う。
「そう言う先輩はどうなんです?」
「何がだ?」
そう言って先輩は首を傾げる。
「好きな人ですよ。俺、そういうの結構敏感な方だと思うんですけど、先輩はいまいち分からないんですよね」
「……分からなくていいんだよ。それより、ほら、中村を助けなくていいのか?」
『かなり困ってるぞ』と先輩は言う。
見ると、緋桜を囲む生徒の数がさっきより増えていた。
俺は先輩の言葉に甘えて緋桜を助けに向かった。
なんか上手いことはぐらかされたな。
結局のところ、どっちが好きなんだろう。
やっぱ先輩はよく分からない。
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