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第267話

(秋哉side) 午前の部が無事終わって、昼休憩に入った。 俺たちは生徒会室に来て昼食と午後からの段取りを確認していた。 さっきまで何かと生徒たちに囲まれてたから生徒会室が静かで落ち着く。 そう思ってホッと息を吐く。 文化祭の時はここまで囲まれることは無かった。 たぶん自分たちの出し物とかで周りに目を向けることがあまり無かったんだろう。 でも体育祭の場合は自分が出場する競技の時以外は比較的自由だ。 特に競技が終わった後は必ずって言っていいほど囲まれた。 ふと緋桜を見ると、緋桜も若干ぐったりしてた。 他の三人は変わらず元気だ。 「緋桜、ゆかりさんたちの所に行かなくて良かったの?」 そう聞くと緋桜が若干顔をしかめた。 「……今行っても母さんたちの所に辿り着けないような気がする」 そう言う緋桜に俺は笑うしかなかった。 「おーい!午後の確認するぞ」 佐倉先輩がそう言って机の上にプログラムと競技資料を出す。 俺が目を向けたのは問題の『障害物走』だった。 「佐倉先輩、いい加減教えてくれませんか?」 俺がそう聞くと、佐倉先輩はキョトっとする。 「何が?」 「だから、障害物走のことですよ!」 そう言うと、先輩は『あぁ』と手を打つ。 「教えるわけないだろ」 そう言って、先輩はニッコリ笑った。 「まぁまぁ、会長落ち着いてください」 佐倉先輩に詰め寄る俺を日向先輩が止める。 「そうよ!大丈夫、悪いようにはならないから」 『ね?』と言って宮藤先輩は笑う。 「だったら内容を教えてくださいよ」 俺がそう言うと、二人は顔を見合わせる。 「ごめんね~それは出来ないかな」 宮藤先輩が少し困ったようにそう言って手を顔の前で合わせる。 「それは蒼の言う通り、お楽しみってことで」 日向先輩は『お願いします』と小声で言ってきた。 佐倉先輩は終始ニコニコしてるだけだった。 この二人も佐倉先輩に口止めされてる。 と言うことは、いくらこの二人に聞いても無駄だ。 そう思って、俺は思わず舌打ちをした。 結局何も出来ないまま障害物走の順番になってしまった。 当然俺はその準備から外されていた。 緋桜は既に集合場所に行ってしまったし、準備は先輩たちと実行委員とで進められている。 俺はやることがなくて生徒会席でその準備の様子を見ていた。 障害物走のコース上には次々と障害物が用意されていく。 平均台に跳び箱、壁登りなど。 ……意外と普通の障害物なんだな。 先輩のことだからもっとすごい障害物を用意してると思ったんだけど。 ただ、1つ気になるのは…… あの最後の白い箱は何なんだ? 障害物の最後に置かれてる白い箱。 中に何が入ってるのかはここからは分からない。 俺にはあの箱の中身を知る術がなかった。

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