272 / 452

第269話

(佐倉side) いや~、これの為に色々費やした甲斐はあったな。 それもこれも皆、秋哉のこの姿が見たいが為だ。 『一位でゴールした中村くんにインタビューしたいと思いまーす!』 一位でゴールした中村に放送委員が直撃してる。 『一位でゴールした感想を』 そう言って放送委員は中村にマイクを向ける。 『え……えと……』 いきないマイクを向けられた中村はたじたじとしてる。 中村はこういうの慣れてないからなぁ。 少しずつ後退りながら放送委員から逃げようとする中村の姿に笑いが込み上げてくる。 『んー、じゃあサービスで鳴き真似だけでも!』 『え、鳴き、真似?………にゃ……にゃあ?』 中村はこれで合ってるのかとでもいうような顔でコテンと首を傾ける。 その瞬間、会場内にこれでもかってくらい奇声が響きわたった。 そう、障害物走ってのはおまけで、メインはこれ。中村にネコミミを着けること。 まぁ事の発端は翠の『中村くんってネコみたいだよね』って言葉なんだけど。 確かに中村は慣れてない奴には警戒心剥き出しだし、慣れれば依っては来るけど過度な接触は嫌う。 本当にネコみたいだ。 それで中村にネコミミを着けてみようって思い付いた。 でもただ着けるだけじゃ面白くない。 という事で、この体育祭に目をつけた。 ここまで思い通りの反応してくれると、俺も仕掛けた甲斐はあるなぁ。 そう思うとニヤニヤが止まらない。 鳴き真似とかまでは考えてなかったけど、とりあえず放送委員よくやった!! 「何か言うことはあるか?」 俺は横でしゃがみ込んで顔を押さえる秋哉にそう声を掛ける。 「……………………ありがとうございます」

ともだちにシェアしよう!