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第273話

「緋桜?……まーた何か考えてるでしょ?」 そう言って秋哉が俺の顔を覗き込んでくる。 「…もしかして、旅行嫌だった?」 そう聞かれて一瞬話すのを躊躇したけど、どのみち話すことになるんだろうなと思った。 だから俺は秋哉にその事を話した。 「…なんだ、そんな事か」 秋哉はちょっとため息混じりにそう言う。 「俺と旅行するの嫌なのかと思った」 そう言って秋哉はホッとした顔をした。 「…ごめん、秋哉と出掛けるのが嫌な訳じゃない」 俺がそう言うと、秋哉が俺の頭に手を置く。 「分かってるよ」 そう言って秋哉はクスッと笑う。 「面と向かってそんな事言われたら、誰だって怖くなるよな。でも今の緋桜はその頃の緋桜とは違うだろ?俺は緋桜と旅行に行きたいと思ってる。それに、そんな思い出が最後って嫌じゃない?」 そう言って秋哉はニッと笑った。 『まぁ、無理強いはしないけど』と秋哉は言う。 確かに、まだ何処かで怖いと思ってる。 でも、怖いと思うよりも強い思いが確実にある。 「……俺も秋哉と行きたい」

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