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第274話
俺が『行きたい』と言ってからの秋哉の行動は早かった。
秋哉はまってたかのように旅行のパンフレットをいくつも持ってきた。
「緋桜は何処がいい?」
そう言って秋哉は旅行のパンフレットを広げる。
って言っても、俺は何処がいいとか分からない。
「……どこでも…秋哉に任せる」
俺がそう言うと、秋哉は悩みだす。
「あ、でも海外は無理」
俺は秋哉の見てるパンフレットの中に海外のパンフレットを見つけてそう言う。
人生で二回目の旅行が海外なんてハードル高すぎるし、何よりパスポートを持ってない。
「海外は嫌?じゃあ国内か……」
そう言って秋哉はまた悩みだした。
「あ、そうそう!今回は先輩たちも誘おうと思ってるんだけど」
パラパラとパンフレットを見てた秋哉が、唐突にそう言う。
「え?」
……先輩たちも誘うんだ。
勝手に二人で行くんだと思ってた。
「…もしかして、二人で行きたかった?」
そう言って秋哉が俺の顔を覗き込んでくる。
俺は図星をつかれて顔が熱くなった。
そんな俺を見て秋哉がクスクスと笑う。
俺はそんな秋哉を少し睨んだ。
「ごめんごめん」
秋哉はそう言って謝るけど、顔は笑ってた。
「俺も最初は二人で行こうと思ってたんだけど、緋桜の話聞いたら人数居た方が緋桜には良いのかなって思ったんだ」
「え?」
「来年には俺たちも修学旅行があるし、いきなり大人数じゃ緋桜も戸惑うでしょ?その点、先輩たちなら緋桜もそこまで緊張しないんじゃないかな」
『緋桜が慣れる為には良いと思う』と言って秋哉は笑う。
……そこまで考えてくれてたんだ。
でも、俺に付き合わせるって先輩たちも迷惑なんじゃ……
「それに緋桜と旅行なんてあの人たちに言ったら、絶対行きたいって言い出すよ。まぁ、あの人たちが一緒だと、被害を受けるのは確実に俺なんだけどね……」
そう言って秋哉はどこか遠い目をした。
それに対して、俺は何も言えなかった。
でも皆で旅行……
「……楽しそう」
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