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第276話
(秋哉side)
体育祭も無事終わって、いよいよ秋休みに突入した。
先輩たちが選んだ行き先は離島2泊3日。
今の時期でもまだ暖かいし、海もキレイだから良いんじゃないかってことらしい。
緋桜もパンフレットに載ってる海を見て目を輝かせていた。
緋桜が楽しみにしてるみたいで良かった。
………そう思ってたんだけど。
旅行当日、俺たちは離島に行くために空港に居た。
でも緋桜はこれまでにないくらい沈んでいた。
「………飛行機、乗るの知らなかった」
そう言って緋桜は完全に気落ちしてしまう。
「ごめん!言わなかったのは悪かったから!」
俺は手を顔の前に合わせて謝った。
緋桜は離島に行くのに飛行機に乗ることを知らなかったらしくて、空港に着いたとき首を傾げた。
飛行機に乗ることを言うと、かなりショックを受けてた。
本当は舟でも行けるけど、かなり時間が掛かるってことで飛行機にしていた。
俺はそれを緋桜に伝えた気でいた。
緋桜は飛行機に乗るのは初めてで、乗るのにかなり抵抗があるらしい。
完全に俺の失態だ。こんな事なら舟にしとけば良かった 。
でももうそれは遅くて、俺は気落ちしてしまった緋桜に何度も謝った。
先輩たちもなんとか緋桜の気持ちを持ち直させようと色々してくれた。
ただ、そうこうしてる内に搭乗時間になってしまい、俺たちは渋る緋桜をなんとか機内まで引きずっていった。
座席に着いた緋桜は緊張した表情で固まってしまっている。
「……緋桜、大丈夫?」
そう聞いても反応が返ってこない。
緊張のし過ぎで返事を返す余裕がないみたいだ。
前の座席に座ってる先輩たちも緋桜を気にして、頻りに後ろを振り向いていた。
その内ポンッとベルト着用のサインが点灯する。
それでも緋桜は動かないから、俺が緋桜のベルトを締めた。
機内アナウンスが流れて、エンジンが掛かる。
その音で緋桜がピクンと反応した。
「……動く?」
緋桜はすがるような目でそう聞いてくる。
あぁ~、本当失敗した。
緋桜がここまで飛行機を怖がるとは思わなかった。
「…大丈夫だよ」
俺は出来るだけ笑顔でそう言って緋桜の手を握った。
飛行機が動き出すと、緋桜は握った手はそのままで腕にもしがみついてくる。
滑走路を進んで飛び上がる頃には、額を俺の肩に着けてギュッと目を瞑って耐えていた。
怖い思いさせて申し訳ないと思う。
思うんだけど………
俺は必死にしがみついてくる緋桜が可愛くて仕方なかった。
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