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第277話

(秋哉side) 離島までは約1時間ほど。 飛行機も安定してベルト着用ランプが消えると、先輩たちは早速動き始める。 って言ってもやっぱり緋桜が気になるみたいだ。 「中村くん大丈夫?」 宮藤先輩が緋桜にそう聞く。 それに緋桜は頷くだけだった。 緋桜は離陸してからずっと俺から離れない。 まぁ、俺としては嬉しいんだけど。 「そう言えばさ、なんでファーストじゃないんだ?」 佐倉先輩が唐突に聞いてくる。 「は?」 「いや、お前のことだからファーストだと思ってたんだけど」 どうやら先輩はエコノミーが不服だったらしい。 「何時間も乗るならまだしも、1時間程度でファーストなんて乗らないですよ」 そう言うと、先輩は見るからにガッカリした顔をする。 「ファースト、乗ってみたかったんだけどな」 「自力で乗ってください」 俺が先輩に呆れ気味にそう言うと、緋桜がクイクイと服を引っ張ってきた。 「どうしたの?」 「……ファーストってどんな感じなんだ?」 緋桜はファーストクラスが気になったみたいで若干目を輝かせる。 「んー、飛行機よって違うけど、大体は座席が孤立しててゆったりしてるかな」 「……孤立?」 「ここみたいに席がくっついてるんじゃなくて、一人掛けが多いよ」 『気になるなら今度乗せてあげるよ』と言うと、緋桜は首を振った。 「……俺はこっちの方がいい」 そう言って緋桜はまた俺にくっついてきた。 着陸の時も緋桜は俺にしがみついてきた。 手続きを終えて空港のロビーに着くと、その時点で緋桜はぐったりとしていた。 「……大丈夫?」 そう聞くと緋桜はチラッと俺を見る。 「……疲れた」 そう言う緋桜に、俺は笑うしか出来なかった。 「翠はまだ来ないのか?」 佐倉先輩がため息混じりにそう言う。 今は宮藤先輩の荷物の受け取り待ち。 俺たちの荷物は少し大きめのバック一つだけ。 機内に持ち込めたから飛行機を降りたらそのまま行けるけど、宮藤先輩はキャリーケースを持ってきてて、重量オーバーで機内に持ち込めなかった。 2泊3日の旅行でなんでそんなに荷物があるのかちょっと不思議だ。 「お待たせ~!!」 しばらくすると、荷物を受け取った宮藤先輩が戻ってきた。 「遅い!」 戻ってきた宮藤先輩に佐倉先輩がそう言い放つ。 「仕方ないでしょ!なかなか荷物が出てこなかったんだから!」 宮藤先輩も負けじと応戦する。 「まぁまぁ、それくらいにしとこうよ」 と言い争いを始めそうな二人を日向先輩が宥めてた。 これはいつもの事で、俺たちは見てるだけだった。 「……てか、何をそんなに持ってきたんだよ」 と佐倉先輩が呆れ気味に聞く。 「女の子には色々必要なの!」 と宮藤先輩は胸を張って言った。 佐倉先輩はそれに『あっそ』と返していた。 「ところで、これからどうするんだ?」 一通り宮藤先輩との言い争いを終えた佐倉先輩がそう聞いてくる。 「……どうしましょう?」 緋桜が疲れてるからどこか休憩が出来るとこって思ったけど、時計を確認するとまだお昼前で、ホテルのチェックインにはかなり早い。 「何処かでお昼食べよう」 どうしようかと考えてると宮藤先輩がそう言う。 「ご飯食べるなら俺、店を調べてきてますよ」 と日向先輩が携帯を取り出しながら言う。 『この近くなら』と言いながら携帯で検索する。 「海鮮の美味しい店がありますね」 そう言ってその店のホームページを開いた。 「お、いいじゃん!」 ホームページの写真を見て、佐倉先輩も食いつく。 「緋桜はそれで良い?」 そう聞くと緋桜も頷いた。 「じゃあ決まりだな!」 そう言って佐倉先輩は歩き始めた。

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