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第278話
(秋哉side)
先輩たちに連れられた店で海鮮丼を頼む。
流石、海の近くだけあってネタは新鮮で種類も豊富だった。
お腹も脹れて、俺たちはホテルのチェックインの時間までぶらぶらする事にした。
この離島はそこまで大きな島ではないけど、リゾート開発されててショッピングモールや飲食店、ちょっとした娯楽施設が整っている。
この島ではマリンスポーツ体験が目玉になっていた。
俺たちが泊まるホテルもこの島に唯一あるホテルだ。
あとは民宿とかが少しあるみたいだ。
ぶらぶら歩いていると、緋桜がふと足を止めて海を眺めていた。
「ホテルの前も海だから、後で行ってみよ?」
足を止めた緋桜にそう言うと、緋桜は頷いた。
しばらくぶらぶらしていると、ホテルのチェックインに丁度良い時間になる。
俺たちは一度ホテルに向かった。
俺の名前で予約を取ってたから、手続きは俺がする。
手続きが終わって皆の所に戻ると、流石に歩き疲れたのか皆若干ぐったりしていた。
「チェックイン済んだんで、行きますよ!」
俺がそう言うと、皆モゾモゾと動き出した。
荷物はホテルのスタッフに預けてそのまま部屋まで案内してもらう。
「そういえば、俺たちの部屋の鍵は?」
そう佐倉先輩が聞いてくる。
「部屋は一部屋なんで鍵はこれだけですよ」
そう言って持ってた鍵を見せると、先輩たちは驚いた顔をした。
「一部屋だけ!?」
宮藤先輩がそう声を上げる。
「五人で一部屋は流石に無理じゃないですか!?」
流石の日向先輩も驚いていた。
「それは大丈夫ですよ」
そうこうしてる内にエレベーターが部屋のある階に到着する。
「そこら辺はちゃんと考えてあるんで!」
そう言って俺は皆に笑顔を向けた。
エレベーターが止まったのは、ホテルの最上階。
スタッフに案内されて部屋に入ると、先輩たちは口をポカンと開けてた。
このホテルの最上階には客室が二部屋。
スイートルームだ。
ここのスイートルームはセミダブルのベッドが2つづつ入ったベッドルームが三部屋備わっている。
ツインを三部屋取っても良かったんだけど、出来れば皆一緒がいいと思った。
だからこのスイートルームは丁度良かった。
「……まさかスイート頼んでるとは思わなかったわ」
そう佐倉先輩が呟く 。
「……私、スイートなんて初めて……何か、すごく緊張するんだけど……」
「……俺も……」
宮藤先輩と日向先輩は何かぼそぼそと言って、その場で立ち尽くしている。
何か震えてるように見えるのは気のせいかな?
「…秋哉、これ何処に置けばいい?」
緋桜が荷物を持ってそう聞いてくる。
「とりあえずその辺に置いとけばいいよ」
そう言うと、緋桜は『分かった』と言って頷いた。
そんな緋桜に先輩たちが駆け寄った。
「何でお前は平気なんだ!?」
そう言って佐倉先輩が緋桜の肩を掴む。
その瞬間、緋桜の体がビクッと跳ねた。
「こんな部屋、緊張しないの!?」
そんな事はお構い無しに宮藤先輩も緋桜に詰め寄った。
「何でそんな落ち着いてるんですか!?」
と日向先輩まで緋桜に詰め寄る。
緋桜はどうしていいのか分からず、びくびくとしていた。
「ちょっ!何緋桜に詰め寄ってんですか!?」
そう言って緋桜から先輩たちを引き離すと、余程怖かったのか緋桜は俺の後ろに隠れてしまった。
「…悪い、こんな部屋で平然としてる中村が信じられなくて」
佐倉先輩の言葉にあとの二人もうんうんと頷く。
俺はそんな三人にため息をついた。
「ここの方が都合が良かったんですよ。最初は三部屋取ろうと思ってたんですけど、そうすると宮藤先輩が一人になるでしょ?出来れば皆一緒が良かったんですよ」
俺がそう言うと、三人は納得してくれたみたいだ。
「いやいや、でも中村だってスイート初めてだろ?何で平気なんだよ!?」
先輩がそう言うと、俺の後ろに隠れていた緋桜が少し顔を出す。
「…………秋哉の家みたい、だから……」
緋桜は突然詰め寄られて怯えてるみたいで、それだけ言うとまた俺の後ろに隠れた。
でもそれを聞いて、先輩たちは納得した。
「なるほどな」
そう言って佐倉先輩はため息をつく。
「慣れってやつね」
と言って宮藤先輩は笑った。
「慣れれば物怖じしないって事ですか……」
と日向先輩は何故か感心していた。
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