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第284話
(佐倉side)
そっとドアを開けて中を覗くと、ベッドが一つ見える。
そのベッドには誰も寝てる様子が無かった。
一瞬、あれ?って思ったけど、もう1つのベッドを見ると秋哉と中村が仲良く抱き合って寝ていた。
まぁ、想像通りというか何というか。
2人の顔を見るとよく寝てる。
俺は2人の寝顔を見て、笑みが溢れた。
『ちょっと退いて!』
2人の寝顔を見てると、翠に押し退かされた。
俺を退かした翠は興奮気味に2人の寝顔をカメラに納める。
ただ、写真を撮る度にシャッター音がするから気が気じゃない。
『…おい、あんま撮ると2人が起きるぞ』
『もう少しだけ』
翠は止める俺を振り切ってまた撮り始める。
俺はそんな翠を見てため息をついた。
最後にアップで撮ろうとして翠がカメラを2人に近付けた瞬間、そのカメラを何かが遮った。
「……何してんですか?」
そう声がして、一瞬ドキッとする。
声がする方を見ると、秋哉の目がしっかり開いていた。
「……あ」
秋哉と目が合った俺たちは、思わず固まってしまった。
のそっと体を起こした秋哉がこっちを睨んでる。
その奥では中村も起きてしまったようで、もぞっと動いてこちらを伺っている。
「…お…おはよう」
そう言って俺は笑顔を作るも、引き吊ってるのが自分でも分かる。
「おはようございます、で?何してんですか?」
「…えっと…それは………」
そう聞かれて俺は翠と朱春を見ると、2人は俺の後ろに隠れて俺の背中をグイグイ押す。
「お、おい!押すなよ」
背中を押す2人に抵抗しつつも秋哉を見ると、秋哉がじっと俺を見る。
「………あ~……えっと……寝起き、ドッキリ……的な?」
そう言って笑うと秋哉もニッコリと笑う。
「先輩」
顔は笑顔なのに、その声は恐ろしく冷たい。
その声に俺はもちろん、翠と朱春も後退る。
「くだらない事してないで、大人しく寝ててください!!」
秋哉にそう怒鳴られて、俺たちはベッドルームを追い出された。
結局、寝起きドッキリは失敗に終わった。
まぁ、目的を達成した翠は満足そうだったけど……
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