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第286話
(秋哉side)
「……なぁ、中村はなんで落ち込んでるんだ?」
昼過ぎ、起きてきた佐倉先輩が緋桜を見てそう聞いてくる。
「…誰のせいだと思ってるんですか」
今、緋桜は見るからに沈んでいた。
その原因は分かってる、それは朝の海が見られなかった事。
明け方に先輩たちに中途半端に起こされて、その後二度寝した俺たちは、起きたら昼近かった。
先輩たちもあの時間まで寝ずに起きてたみたいで、今まで寝てた。
朝の海を見るって楽しみにしてた緋桜は、起きて時計を見た瞬間ショックを受けてた。
「緋桜、海はまた明日見よ?」
俺がそう言うと、緋桜は頷く。
でも、その表情は沈んだままだった。
「それより緋桜、今日は船に乗るんだろ?」
そう言うと、緋桜がぴくんと反応する。
この離島には船底がガラス張りになっていて、そこから海の生き物が観察できるというものがある。
この離島の売りの1つだ。
緋桜はそれも楽しみにしていた。
「早くお昼を食べて行かないと、それも見れなくなるよ?」
「…それはやだ」
そう言って緋桜は俺の服を掴む。
「じゃあ、準備して行こうか」
そう言うと緋桜は頷いた。
「中村くん、ごめんね?」
「すいませんでした」
昼ご飯を食べてるときに、宮藤先輩と日向先輩が緋桜に謝る。
緋桜も急に謝ってきた先輩たちにオロオロしてた。
……てか、俺に謝罪がないのが気になるけど、まぁいいや。
お昼を食べ終えて、俺たちは船着き場に来ていた。
乗る予定の船は意外に大きい。
それには緋桜も目を輝かせていた。
その船で観察ポイントまで向かう。
ポイントに着いたら、停船させて乗船客は船底に下りて海の中を見る。
それまでは船底には下りられないから船上で各々過ごす。
緋桜は船も乗るのは初めてらしくて、どうかなって思ったけど、船は平気みたいだ。
先輩たちと話ながら海を見たり、前方に行ったり後方に行ったりしてる。
「楽しい?」
そう聞くと、緋桜は頷いた。
まぁ取り敢えず、 緋桜の機嫌が直って良かった。
そう思って、俺は息を吐いた。
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