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第287話

(秋哉side) しばらく乗ってると、観察ポイントに着いたらしくアナウンスが入る。 アナウンスに従って、俺たちは船底に移動した。 船底に下りると一面大きいガラスに覆われていて、一気に水の中に入った気分になる。 「……すごい」 緋桜がその光景を見てボソッと呟いた。 今日は海も比較的穏やからしく、泳いでる魚がよく見えた。 緋桜はガラスに張り付いて、日向先輩に泳いでる魚の名前とかを教えてもらっていた。 俺と佐倉先輩はその様子を後ろから眺めてると、ふとあることに気付いた。 「そういえば、宮藤先輩はどこ行ったんですか?」 少し前から宮藤先輩の姿を見てない気がする。 そう思って、佐倉先輩に聞いてみた。 「あぁ、翠ならあそこに居るぞ」 佐倉先輩はそう言って後ろの方を指差す。 見ると宮藤先輩が一心不乱に写真を撮ってた。 何を撮ってるのかは、あまり知りたくないな。 そう思って俺は宮藤先輩は放っておくことにして、また緋桜に視線を戻した。 「…あの~」 緋桜と日向先輩のやり取りを眺めていると、後ろから声を掛けられる。 見ると4人の女の人が立ってた。 「良かったら私たちと一緒しませんか?」 見た感じ、大学生くらいか。 その人たちはキャッキャッしながらそう言ってくる。 俺と佐倉先輩は顔を見合わせた。 緋桜と日向先輩もそれに気付いてこちらを見る。 「悪いけど……」 「えー、私たちも4人なんで丁度良くないですか?」 佐倉先輩が断ろうとすると、その人たちはそれを遮ってグイグイ迫ってくる。 佐倉先輩もそれには呆れていた。 「私の連れに何か用?」 どう対処しようかと思ってたら、後ろの方からそう声がした。 見ると宮藤先輩が立ってて、先輩は彼女たちにニッコリと笑顔を向ける。 宮藤先輩の出現に彼女たちも驚いてた。 「用が無いなら離れて欲しいんだけど?」 そう言って宮藤先輩は彼女たちと俺たちの間に入る。 宮藤先輩は彼女たちにもう一度笑顔を向けると、彼女たちは何故か焦って退散していった。 「……宮藤先輩、すごいですね」 「翠は自分の容姿を自覚してるからな」 俺がそう呟くと、佐倉先輩は少し呆れ気味に言う。 そう言われて、俺は妙に納得してしまった。

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