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第288話

(秋哉side) 俺たちは約1時間程、水中観察とクルージングを楽しんだ。 緋桜も終始ご機嫌で良かったと思う。 船を下りる時あのナンパしてきた人たちを見かけたけど、彼女たちは目が合うなりそそくさと逃げるように立ち去って行った。 ……もしかしてあの後、宮藤先輩が何かしたのか? 俺は宮藤先輩を見る。 ………怖いから聞かないでおこう。 そう思った。 船を下りると、俺たちはお土産を買おうってことになって、近くのショッピングモールに来ていた。 ここはその土地の名産品が沢山売ってる。 どれも地元にはない物ばかりで珍しい。 緋桜を見ると、緋桜は真剣な顔をして品物を見ていた。 「ゆかりさんと優さんに?」 そう声を掛けると、緋桜の体が少し跳ねる。 集中してたみたいで、驚かせちゃったみたいだ。 「ごめん、驚かせたね」 そう言うと、緋桜は首を振る。 「大丈夫」 緋桜はそう言って、また商品に視線を戻した。 「何買うの?」 「……何買ったら良いのか分からない」 そう言って緋桜は視線を落としてしまった。 緋桜は誰かにお土産を買うって事をしたことが無いから、無理もないと思う。 かと言って、俺もアドバイス出来る程お土産を選ぶって行為をしたことがない。 そう思ってると先輩たちが目に入った。 「先輩たちに相談してみるか」 そう言うと、緋桜も頷いた。 「ゆかりさんと優さんの他には誰かに買うの?」 「佐々木さんとあとは………」 そこまで言って緋桜は口籠る。 その後、少し不安そうな視線を向けてきた。 「……もしかして緋方?」 そう言うと、緋桜は小さく頷いた。 「……俺からは受け取って、貰えないかもしれないけど」 緋方とはあれ以来会ってないけど、緋桜の中では切れない存在。 あんな目にあっても、緋桜はまだ緋方の事を想ってる。 俺としては本当は関わってほしくは無いけど…… そう思って俺はため息をつきつつ、緋桜の頭に手を置いた。 「何かいい物があると良いな」 そう言うと、緋桜は少し驚いた顔をしてその後微笑んで頷いた。

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