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第289話
先輩たちにアドバイスを頼むと快く引き受けてくれた。
母さんには白い珊瑚のネックレス、父さんには皮の手帳、佐々木さんには秋哉と一緒に選んだ万年筆、緋方には押し花のしおり。
どれもこの島の特産品と加工技術で作られた物らしい。
一番悩んだのが緋方へのお土産だった。
正直、緋方に何をあげたら喜ぶのか分からなかった。
でも俺の記憶の中で、緋方はいつも本を読んでた事を思い出した。
今も読んでるのかどうかは分からないけど、使ってくれるといいな。
「良いのがあってよかったね」
秋哉にそう言われて俺は頷いた。
「…皆、喜んでくれると良いんだけど」
「大丈夫、緋桜が皆の事を想って選んだんだから」
そう言って秋哉は頭を撫でてくれた。
「そういえば、先輩たちには渡さなくていいの?」
「ぁ……うん」
先輩たちにも今回のお礼ってことでプレゼントを買っていた。
でもいざ渡すとなると、ちょっと怖い。
そんな俺を見てか、秋哉がクスクス笑う。
「ほら、おいで」
そう言って秋哉に手を引かれた。
「先輩たち、ちょっといいですか?」
お土産物を物色してた先輩たちに、秋哉は躊躇なく声を掛ける。
先輩たちも『どうした?』と言うような顔で見てきた。
「ほら」
そう言って秋哉に背中を押される。
「………あの……」
渡してもいいのかと思って、目が泳いでしまう。
チラッと秋哉を見ると、『大丈夫』と言うように頷く。
先輩たちも『どうした?』と聞いてくる。
「……あの……これ…お礼、です」
俺は意を決して先輩たちに渡した。
先輩たちにそれぞれ小さい小袋を渡す。
先輩たちはそれを開けて中身を確認した。
すごいドキドキする。
でもその反面、すごく怖かった。
「わぁ!これ貰っていいの?」
と宮藤先輩が満面の笑みで聞いてくる。
俺はそれに頷くしか出来なかった。
「サンキュー」
と佐倉先輩も笑う。
「ありがとうございます」
そう言って日向先輩も笑ってくれた。
先輩たちに渡したのは、ストラップ。
佐倉先輩には青、宮藤先輩には緑、日向先輩にはオレンジ。
それぞれのイメージにあった玉のついたもの。
「これ、お揃いなんだな」
佐倉先輩がそれぞれのストラップを見て言う。
「…はい、一緒のがいいかなって」
そう言うと、佐倉先輩は『ふーん』と返してくる。
「で、お前らのは?」
「…え?」
そう聞かれて、俺も秋哉もきょとんとしてしまう。
そんな俺たちを見て先輩はため息をついた。
「あのなぁ、俺らだけお揃いって意味無いだろ」
そう言って佐倉先輩は少し呆れた顔をする。
「そうですよ!お揃いにするなら二人も、ですよ」
そう言って日向先輩が笑う。
「ほら、早く二人の分も買いに行こ!」
宮藤先輩は『ほらほら』と言って俺たちの背中を押した。
その後俺は白、秋哉は紫のお揃いのストラップを買った。
ちなみに俺たちの玉の色を選んでくれたのは先輩たち。
秋哉が『なんで俺は紫なんですか?』と言ったら、佐倉先輩が『本当は黒だけど黒が無かったから紫!』と返していた。
俺の中の秋哉のイメージは黄色なんだけど。
先輩になんで黒と紫なのか聞いたら、『秋哉は腹黒いから黒!それが無かったから毒々しい紫!』と言って笑ってた。
それは秋哉には言わないでおこうと思った。
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