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第292話

「寒くないか?」 そう聞かれて俺は頷く。 「大丈夫」 そう言うと、秋哉はニコッと笑った。 「もう少しで日の出だ」 そう言われて俺は海を見た。 もう空はかなり明るくなってる。 水平線は朝日の光で赤く色付いて来てる。 海も暗くてあまり見えなかったのが、キラキラと光を帯びて来ていた。 しばらく海を眺めてると、水平線の向こうに朝日が少しだけ顔を出す。 時間が経つにつれて、少しずつ見えてくる太陽の光で海に光の橋が出来てくる。 「………キレイ」 俺はその光の橋に見惚れた。 昼間の海は、海に光が吸い込まれて真っ青だった。 夕方は夕陽が海と空を真っ赤に染めていた。 朝の海はそのどちらとも違って、光の橋が伸びて、太陽が完全に出てくるとその光が水面に反射してキラキラと輝く。 「ありがとう、見られて良かった」 俺がそう言うと、秋哉は少し驚いた顔をした後微笑んだ。 「喜んでもらえて良かった」 俺たちはもう一度海に視線を戻す。 俺たちは自然とお互いの手を握っていた。 「来年、また来ようよ」 俺はそう言う秋哉の顔を見る。 「今度は二人で」 『ね?』と言って秋哉は笑った。 「…うん」 俺たちはしばらく浜辺を歩いた。 陽は大分昇っていて、さっきまで白くキラキラしてた海はその青さを取り戻しつつあった。 海は本当に見る度にその姿を変える。 俺はずっと見ていたいと思った。 出来れば秋哉と一緒に。 そう思って俺は胸元の指輪に触れた。 ……え?

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