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第296話

秋哉はなんでそんな寂しそうに笑うんだろう。 俺、また何かしちゃったのかな。 やっぱり指輪を落とした事がいけなかったのかな。 さっきまでの楽しくて幸せだった気持ちが、嘘のように沈んでいく。 指輪無くして、秋哉に心配掛けて。 ………俺、何してんだろ。 「っ!ちょっ、なんで泣いてんの!?」 そんな事を考えていると、秋哉の焦る声がした。 「…え?」 泣いてるって何の事だろう。 そう思ってると、秋哉が俺の目の下を服の袖で拭く。 見ると秋哉の服の袖が濡れてて、自分が泣いてることに気付いた。 「っ!……ごめん」 そう言って涙を拭いてくれてる秋哉の手を退かして、自分で涙を拭う。 それでも涙は次から次に流れて、止まってくれなかった。 俺に泣く資格なんてないのに。 俺が秋哉を悲しませているのに。 そう思って、俺はゴシゴシと流れ続ける涙を拭った。 「駄目だよ、そんなに擦ったら」 そう言って秋哉に手を掴まれた。 拭われる事のない涙がどんどん流れ落ちる。 「ねぇ、なんで泣いてるのか教えて」 そう言って秋哉は、今度は指で俺の涙を優しく拭う。 「……秋哉を、悲しませてる、から」 「ん?」 俺がそう言うと、秋哉は首を傾げる。 「……泣くつもりなんて、なかったけど……勝手に、出てくる」 そう言ってる間にもポロポロと涙は流れる。 「…ごめん…指輪、無くして……秋哉、悲しませて………俺に泣く資格なんて、ないのに………」 そこまで言うと、秋哉は黙ってしまった。 もう自分でも何言ってるのか分からない。 ちゃんと謝りたいのに、上手く話せない。 涙も止めたいのに、一向に止まってくれない。 こんなんじゃ、秋哉が呆れても仕方ない。 そう思ってると、秋哉が抱き締めてきた。

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