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第299話

部屋に戻ると、先輩たちに驚かれた。 宮藤先輩が秋哉に対して何か怒ってるみたいだった。 その後、宮藤先輩に『目を冷やそう』と言われてバスルームに連れていかれた。 俺はなんで目を冷やすんだろうと思ってたけど、バスルームに来て鏡で自分の顔を見て納得した。 鏡に映る俺の顔は、目が腫れて赤くなっていた。 泣いて、目を擦ってたから赤くなったんだ。 だから先輩たちはあんなに驚いてたのかな。 「中村くん、はいこれタオル」 鏡を見ながらそんな事を考えていると、宮藤先輩か濡らしたタオルを渡してきた。 「…ありがとうございます」 俺はそれを受け取ると目に当てた。 タオルを目に当てるとヒヤッとして気持ちがいい。 俺はタオルを目に当てながら、小さくため息をついた。 「…秋哉くんと何があったの?」 目を冷やしていると、宮藤先輩にそう聞かれて俺はタオルの隙間からチラッと先輩を見る。 「ごめんね、秋哉くんは言いたくなさそうだったけど、どうしても気になって」 そう言って先輩は苦笑した。 俺が泣いたのは一目瞭然で、秋哉と何かあったって考えるのが自然だ。 「……すいません、今回は俺が悪いんです」 そう言って俺は、視線を下に向けた。 秋哉は自分が悪いって言ってたけど、その原因を作ったのは俺だ。 「んー、よく分からないけど、一度秋哉くんとちゃんと話した方が良いかもね」 「…話す?」 「そう、二人の様子見てるとね、何かすれ違いがあるように見えるんだよね」 すれ違いって何だろう。 俺が悪いのに、秋哉はそれを認めてくれない。 何をどう話せば、秋哉は分かってくれるんだろう。 俺には、それが分からなかった。 俺を見て、宮藤先輩がクスッと笑う。 「意味が分からないって顔してるね」 「……ぁ…えと…」 俺は図星をつかれて、思わず動揺してしまう。 先輩はその様子を見てクスクスと笑った。 「二人はお互いに言葉が足りないと思うの。中村くんの場合は内に秘めちゃうから特にね。今思ってること、秋哉くんにぶつけてみても良いんじゃない?」 ………今、思ってること。 俺は自分の胸に手を当てる。 「秋哉くんなら、絶対受け止めてくれるから」 そう言って先輩は笑う。 「それに、せっかく旅行に来てるのに、そんな悲しい気持ちで終わらせても良いの?」 そう聞かれて考えてみた。 皆でご飯食べたり、買い物したり、色んな所を見たり。 秋哉と二人で海からの日の出を見て、朝の海を見て、楽しくて幸せだった。 でも今は、その気持ちが薄れてる。 『そんな悲しい気持ちで終わらせても良いの?』という先輩の言葉が浮かぶ。 「………嫌です」 俺がそう言うと、先輩はニコッと笑った。 「じゃあ、秋哉くんとちゃんと話して仲直りしなきゃね」 俺は先輩のその言葉に頷いた。

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