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第300話

(秋哉side) 佐倉先輩と日向先輩に怒られて、戻ってきた宮藤先輩にも怒られた。 緋桜の様子を聞くと、まだ目を冷やしてるみたいで、もう少し待てと言われた。 その後、宮藤先輩に緋桜と少し話した事を聞いた。 宮藤先輩の話によると、緋桜も自分が悪いと思ってるらしい。 宮藤先輩に二人で話すように言われて、俺は帰りの支度をしつつ、緋桜が来るのをベッドルームで待っていた。 しばらくするとコンコンと小さくノックが聞こえて、緋桜が顔を覗かせた。 ただ顔を覗かせたはいいけど、緋桜はベッドルームに入って来ようとはしなくて、俺は思わず苦笑を漏らした。 「おいで」 ドアの所から動かない緋桜にそう言って手を差し伸べると、緋桜はおずおずと入ってきて俺の手を軽く掴んだ。 緋桜を俺の横に座らせる。 緋桜の顔を見ると、冷やしたお陰かさっきより目の腫れは引いていた。 俺の横に座った緋桜は俯いて黙ったままだ。 先輩にはちゃんと話すように言われたけど、俺自身どう話していいのか分からないでいた。 多分普通に話しても、今のままだと『自分が悪い』の水掛け論になる。 「……あの…」 どう話を切り出せばいいのか分からなくて俺も黙っていると、緋桜の方から切り出してきた。 「……宮藤先輩が、二人はすれ違いがあるように見えるって……言ってたんだけど」 そこまで言うと、緋桜はチラッと俺を見る。 「……すれ違いってなに?」 緋桜は俺をじっと見て、そう聞いてきた。 そう聞かれて、俺は考えてみる。 「…あーうん、何となく分かった気がする」 俺がそう言うと、緋桜は首を傾げた。 「俺たちはすれ違いって言うよりは一方通行だったんだよ」 そう言うと、緋桜は更に首を傾げた。 俺はそんな緋桜を見て、思わず笑ってしまう。 「緋桜は自分が悪いと思ってるでしょ?」 そう言うと、緋桜は頷く。 「俺も自分が悪いと思ってる。俺たちはお互いの事を考えてるようで、自分の事しか考えてなかったんだと思う。このままじゃ、いくら行っても平行線だよ。…やっぱり俺たちは言葉が足りないみたいだね」 そう言って俺は緋桜に笑いかける。 「ねぇ、今緋桜が思ってること、俺に聞かせて?」

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