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第303話
(秋哉side)
空港に向かいがてらチラチラと店を覗いていると、店の人に声を掛けられる。
店の人に勧められるまま商品を見てたら、飛行機の時間にギリギリになって俺たちは全力で走った。
何とか間に合って受付を済ませると、俺たちはホッと息を吐いた。
「翠がのんびり見てるから遅れる所だっただろ」
「なによ!蒼だって見てたでしょ!」
と佐倉先輩と宮藤先輩がまた言い争いを始める。
「二人とも落ち着いて!間に合ったんだからさ」
と日向先輩が二人を止めた。
結局は言い争いになるんだよな。
あの二人は……
それを止める日向先輩も苦労するな。
そう思うと苦笑が漏れた。
緋桜が飛行機を嫌がるとこから始まって、先輩たちのドッキリ作戦。
宮藤先輩の本性にお揃いのストラップ。
緋桜と海からの日の出を見て、緋桜と喧嘩?して、帰りの飛行機はギリギリ。
「なんか、バタバタな旅行になっちゃったね」
緋桜にそう言うと緋桜も頷く。
「…でも楽しかった」
そう言って緋桜は微笑む。
「良い思い出になった?」
そう聞くと、緋桜は頷いた。
「俺にとって、旅行は嫌なものでしかなかったけど、今回の旅行でそれがちょっと変わった気がする。やっぱり来て良かった、ありがとう」
そう言って緋桜は微笑んだ。
「先輩たちにも感謝だね」
そう言うと、緋桜は頷いた。
「………でも、これだけは好きになれる気がしない」
飛行機に乗って座席に座ると、緋桜は行きと同じように俺にくっついてきてボソッと呟く。
「これも慣れかな?」
『慣れるために飛行機に一杯乗せてあげる』って言ったら、緋桜はすごい嫌そうな顔をした。
「……慣れなくていい」
「飛行機乗れるようになったら、もっと色んなとこ行けるよ?」
そう言うと、緋桜は少し考え込む。
そうこうしてる内にエンジンが掛かって飛行機が動き出した。
エンジンが掛かった瞬間、緋桜は体を震わせて更に俺にしがみついてきた。
「…………やっぱり、もうしばらく飛行機は乗らなくていい」
そう言う緋桜に、俺は思わず笑ってしまった。
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