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第310話
(秋哉side)
緋桜を俺の事情に巻き込みたくなかった。
でも、先輩に『お前が中村を不安にさせてどうする』と言われて話そうと思った。
そう思って緋桜が戻って来るのを待ってたけど、緋桜が出てったきり戻って来ない。
荷物は置きっぱなしだから戻って来るとは思うけど。
そう思って俺はチラッと時計を見ると、緋桜が出ていって結構な時間が経ってた。
やっぱり探しに行った方がいいか?
そんな事を考えてると、佐倉先輩の携帯がピコンと鳴った。
「秋哉、中村今日は帰るって」
メールを見た先輩が俺にそう伝える。
「は?」
そう聞いた瞬間、嫌な予感がした。
俺は慌てて佐々木に電話した。
電話の向こうで呼び出し音が鳴る。
『早く出ろ』と気ばかりが焦る。
数コール鳴って、それがプツッと途切れた。
『もしも………』
「緋桜から連絡あった!?」
『え!?』
「緋桜から連絡あったか聞いてるの!?」
『ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!何があったんですか?』
電話に出た佐々木は訳が分からないとでも言う口調で聞いてくる。
確かに何も説明無しでは訳が分からないだろう。
そう思って、俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「…悪い、緋桜が先に帰ったみたいなんだ。佐々木の方に迎えの連絡あったかと思って」
『……緋桜くんからの連絡はないですね』
そう言う佐々木に、俺の不安は募っていく。
『秋哉さんは一度学校を探してみてください。俺は会社の方に行ってみます』
佐々木は何があったか察したみたいで、そう言う。
「頼んだ」
俺は『何かあったら連絡して』と言って電話を切った。
「……何かあったのか?」
電話を切った瞬間、佐倉先輩がそう聞いてくる。
「あの人が緋桜に興味をもったんですよ」
そう言うと、佐倉先輩は『あ~』と納得した。
先輩たち俺の事情を知ってるから、そう言えば納得する。
こんなことなら緋桜にも話しておくんだったと後悔した。
「そう言うことなら、ここはもういいから」
『さっさと行け』と先輩は言う。
「すいません」
そう言って俺は、自分と緋桜の荷物を持って生徒会室を出た。
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