317 / 452

第314話

『秋哉と別れて欲しい』 秋哉のお父さんは真っ直ぐ俺を見て言う。 「秋哉には将来、この会社を継いでもらいたいと思ってるんだ。その時、君の存在は秋哉の枷にしかならない」 いつかは言われるだろうと思ってた言葉。 覚悟はしてたつもりだった。 でも、いざ言われると胸が張り裂けそうだった。 「……分かって、ます」 俺が秋哉の枷にしかならないなんて、最初から分かってた。 秋哉と離れた方が秋哉の為だって、分かってるけど……… 「……秋哉とは…別れられない…」 「どうしてだい?君も秋哉とは別れた方がいいと思っているんだろ?」 「……確かに、俺には何も……ないです。 秋哉には貰ってばかりで、何も返せてない」 「だったら」 「でも、今は返せないかもしれないけど…… 俺も、秋哉に返したいと……思う。これが、俺の我が儘だって……分かって、ます」 どうしよう、泣きそうだ。 その時、秋哉のお父さんからハァとため息が聞こえてきて、思わず体が揺れる。 「君は本当に我が儘だね。どうして秋哉なんだい?君なら引く手あまただろう」 「……それは俺には分かりません。俺は、ずっと一人でした……皆に疫病神って呼ばれて、疎まれてきました。でも、秋哉は…秋哉だけは違ったんです。秋哉は俺を受け入れてくれて、色々なものを見せてくれた。色々な初めてを俺にくれた。 俺には秋哉だけなんです。他には誰もいらない」 そうだ、秋哉だけなんだ。 誰に何て言われても、もう秋哉と離れるなんて出来ない。 「……君は」 秋哉のお父さんが何か言いかけたとき、部屋の外がザワザワと煩くなった。

ともだちにシェアしよう!