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第314話
『秋哉と別れて欲しい』
秋哉のお父さんは真っ直ぐ俺を見て言う。
「秋哉には将来、この会社を継いでもらいたいと思ってるんだ。その時、君の存在は秋哉の枷にしかならない」
いつかは言われるだろうと思ってた言葉。
覚悟はしてたつもりだった。
でも、いざ言われると胸が張り裂けそうだった。
「……分かって、ます」
俺が秋哉の枷にしかならないなんて、最初から分かってた。
秋哉と離れた方が秋哉の為だって、分かってるけど………
「……秋哉とは…別れられない…」
「どうしてだい?君も秋哉とは別れた方がいいと思っているんだろ?」
「……確かに、俺には何も……ないです。
秋哉には貰ってばかりで、何も返せてない」
「だったら」
「でも、今は返せないかもしれないけど……
俺も、秋哉に返したいと……思う。これが、俺の我が儘だって……分かって、ます」
どうしよう、泣きそうだ。
その時、秋哉のお父さんからハァとため息が聞こえてきて、思わず体が揺れる。
「君は本当に我が儘だね。どうして秋哉なんだい?君なら引く手あまただろう」
「……それは俺には分かりません。俺は、ずっと一人でした……皆に疫病神って呼ばれて、疎まれてきました。でも、秋哉は…秋哉だけは違ったんです。秋哉は俺を受け入れてくれて、色々なものを見せてくれた。色々な初めてを俺にくれた。
俺には秋哉だけなんです。他には誰もいらない」
そうだ、秋哉だけなんだ。
誰に何て言われても、もう秋哉と離れるなんて出来ない。
「……君は」
秋哉のお父さんが何か言いかけたとき、部屋の外がザワザワと煩くなった。
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