318 / 452
第315話
部屋の外がザワザワと騒がしくなって、いきなりドアが開いた。
「失礼します」
そう言って入ってきたのは佐々木さんだった。
「……佐々木、さん?」
無意識に佐々木さんの名前を呼ぶと、佐々木さんと目が合う。
目が合うと佐々木さんはニコッと笑ってくれた。
「居たね。良かった」
そう言って佐々木さんは俺の前にしゃがむ。
「大丈夫?」
そう言う佐々木さんに俺は頷いた。
「今日は玄十くんを呼んだ覚えはないんだけどね」
秋哉のお父さんから、そう呆れた声が聞こえる。
「緋桜くんを迎えに来たんですよ」
「そんな心配しなくても、話が済めばちゃんと帰したよ?」
「連れ去っておいてよく言いますね」
……佐々木さん、何か怒ってるのかな?
いつもより、話し方がキツいような気がした。
「人聞きの悪いこと言わないで下さい。社長は連れ去ってなんかいないですよ」
そう言ったのは、秋哉のお父さんの隣に立ってた人。
確か、当間さんだっけ?
「あぁ、連れ去ったのは当間さんでしたね?」
「俺はそんな事……」
「してないとでも?承諾を得ずに連れてくのは、立派な誘拐ですよ」
佐々木さんがそう言うと、当間さんは黙ってしまう。
すごく険悪な雰囲気。
どうしよう、これ俺のせいだよね。
様子を伺っていると、佐々木さんは秋哉のお父さんに視線を向ける。
「直に秋哉さんも来ます」
……秋哉、来てくれるんだ。
そう思ったら、張り詰めてた気持ちが少し和らいだ。
ともだちにシェアしよう!