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第318話

(浩一side) 「良かったんですか?」 三人が出ていってしばらく、伊織くんがそう聞いてくる。 「引き止めたって、あの子たちは私の言うことなんて聞かないからね」 そう言って、私は三人が出ていった扉に視線を向ける。 「あなたでもそんな顔するんですね」 そう言って伊織くんはクスッと笑う。 「……そんな顔ってどんな顔だい?」 「子供の親離れが寂しいって顔です」 「………君は意地悪だね」 そう言って少しムスッとした顔を見せると、伊織くんはまたクスクスと笑う。 「でも、あんな秋哉を見たのは初めてだよ。今までは私が何をしても素知らぬ顔で見過ごしてた秋哉が、玄十くんまで使ってあの子の事を迎えに来たんだからね」 「それだけ秋哉さんがあの子の事を本気だって事ですよ」 「あの子も少し脅せば引き下がると思っていたけど、芯はしっかりしてるみたいだ」 そう言うと、伊織くんが何かニヤけてる。 「……何笑ってるんだい?」 「いや、社長が嬉しそうなので」 「そうだね、秋哉にもそういう相手が見つかったってことは喜ばしい事だね。………ところで、君はどうなんだい?」 そう聞くと、伊織くんはきょとんとする。 「見た感じ、全然進展してないじゃないか」 「……俺の事は良いんですよ」 そう言って伊織くんは視線を逸らす。 「のんびりしてると誰かに取られてしまうよ?」 「良いんですよ、それであいつが幸せなら」 「君も大概だね。まぁ、その時になって慌てればいいよ」 「………社長も意地悪ですね」 そう言って伊織くんがジロッと見てくる。 「さっきの仕返しだよ」 そう言うと、伊織くんは呆れたようにため息をついた。

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