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第319話
秋哉に連れられて会社を出る。
佐々木さんの車まで行くと、俺たちはそれに乗り込んだ。
車が出発してしばらく、秋哉はずっと無言だった。
どうしよう……なんか気まずい。
そう思って、俺は秋哉をチラッと見る。
…やっぱり怒ってるよね。
元はと言えば、今回の騒動の原因は俺だ。
秋哉には一人になるなって言われてたのに、俺がそれを無視して一人で帰ったりしたからこんなことになったんだ。
怒って当然だ。
「……あの、秋哉……」
「あいつと、何話したの?」
「え?」
謝ろうと思って声を掛けた瞬間、秋哉にそう聞かれて俺は思わず聞き返してしまう。
「あいつに何か言われたでしょ?何て言われた?」
「……ぁ…えっと……」
秋哉のお父さんには『秋哉と別れて欲しい』と言われた。
それを秋哉に伝えたら、秋哉は従うのかな?
お父さんに言われたから仕方ないって思うのかな?
………それは、嫌だ。
そう思ったら、何も言えなかった。
俺がしばらく黙って俯いていると、秋哉からため息が聞こえてきた。
「別れろとでも言われた?」
秋哉にそう聞かれて、思わず体が跳ねる。
恐る恐る秋哉を見ると、秋哉と目が合った。
目が合うと、秋哉はニコッと笑った。
「大丈夫だよ。あの人に何て言われようと、俺は緋桜と別れる気なんて無いから」
そう言って笑う秋哉を見て、俺はホッと息を吐いた。
「……うん、俺も秋哉と別れたくない。だから…秋哉のお父さんにも別れたくないって言った」
「…聞かなかったでしょ?」
秋哉がそうボソッと呟く。
俺は秋哉を見る。
「……あの人はそういう人だから」
秋哉はそう言いながら、寂しそうに笑った。
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