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第322話

「……ごめん」 「え?」 突然謝ってきた秋哉に、俺は驚いて思わず声をあげてしまった。 「本当は緋桜を巻き込みたくなかったんだ。 守れるって思ってた……でも、結局緋桜に怖い思いさせた」 そう言って、秋哉は俯いてしまう。 「話しておけば良かったと後悔した。………だから、ごめん」 「……確かに怖かった。気付いたら知らない場所にいるし、いきなり秋哉のお父さんが出てくるし」 「…うん、ごめん」 俺はそう言って俯いたままの秋哉の手を握った。 「でも、今回の事は俺も悪いと思ってる。秋哉と佐々木さんが何かしてたのは知ってた。言ってくれるまで待つつもりだったのに、我慢出来なくて、拗ねて意地になってた。一人になるなって秋哉はちゃんと言ってたのに、聞かなかったのは俺。 ……だから、俺も心配掛けて、ごめん」 そう言うと、秋哉が突然抱き締めてきた。 秋哉は苦しいくらいギュッと抱き締めてくる。 「…秋哉?」 いつもの秋哉らしくなくて、ちょっと心配になってくる。 「……もしかしたら、緋桜が離れて行くんじゃないかって思った。大丈夫って思ってる反面、どこかでもしかしてって気持ちもあって……」 『怖かった』と消えそうな声で言う。 「俺は居なくならないよ」 そう言って抱き締めてくる秋哉に、俺なりに精一杯答えるように抱き締め返した。 「……ところで、荒れてた時の秋哉ってどんなだったの?」 落ち着いたところで、ずっと気になってた事を聞いてみる。 「え!?」 「さっきから気になってた」 そう言ってじっと秋哉を見ると、秋哉は目を泳がせて、みるみる俯いていく。 「…………お願いだから、忘れて」 そう言って踞ってしまう秋哉に、あまり触れてほしくないのかなと思って、俺は聞くことを止めた。

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