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第323話

今、俺は秋哉の膝の上に座らされ、後ろから腰を抱き締められていた。 秋哉は俺の背中に顔を押し付けて動かない。 家に帰ってから秋哉はこんな状態で、俺にべったりくっついてくる。 こんな秋哉は珍しくて、いつもなら俺が秋哉にくっついてる事が多いから、いつもと逆だなと思って少し可笑しかった。 でも、それだけ不安にさせてしまったのかと思うと申し訳なかった。 そう思って秋哉の好きなようにさせてたけど、俺が膝の上に乗って結構な時間が経ってる。 「……秋哉、重くない?」 そう聞くと、秋哉は俺の背中に顔を押し付けたまま首を振る。 その後、またギュッと抱き締めてきた。 いつもの秋哉らしくなくて、ちょっと心配になってくる。 顔が見えないから余計だ。 「秋哉、顔見せて?」 そう言って体を捩って後ろを見ようとすると、秋哉が更にくっついてきてそれを止められる。 「……もう少しだけ」 そう微かに聞こえてくる。 ここまで弱ってる秋哉は本当に珍しい。 「ねぇ、秋哉の顔が見たい」 そう言うと、秋哉がようやく少し離れてくれた。 その隙間を使って体の向きを変えて秋哉と向き合った。 ようやく見れた秋哉は、今にも泣きそうな顔をしていた。 秋哉は倒れるようにポスンと俺の胸に額を付ける。 「…ごめん、もう少しだけ……」 そう言って秋哉はまた抱き締めてくる。 「……どうしたの?」 「………分からない。なんか、気持ちがぐちゃぐちゃしてる」 秋哉が今なにを思ってるのかは分からない。 秋哉の中で、なにか整理が着かないものがあるのかもしれない。 でも、これで少しでも秋哉の気持ちが落ち着くなら。 そう思って、俺は秋哉の頭を抱えた。

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