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第324話

しばらく俺にくっついていた秋哉が、ハァとため息をついてゆっくりと離れた。 「落ち着いた?」 俺はそう聞きながら秋哉の膝から下りて横に座る。 「ごめん、もう大丈夫」 そう言いながらも、秋哉は隣に座った俺の肩に頭を置く。 「どうしたの?」 「ん~、何か久しぶりにあの人に会って、色んな感情が溢れてきた」 そう言って秋哉はもう一度ため息をついて目を閉じた。 秋哉がここまで情緒不安定になったのは俺が知ってる中で初めてだ。 ただ会うだけでも、心穏やかでは居られない。 秋哉に取って、お父さんはそれほどの存在なんだ。 「……俺、秋哉のお父さんに秋哉と別れて欲しいって言われたとき、すごいショックだった。秋哉と付き合うようになって、いつかは言われる事だろうと思ってたけど、実際に言われるとかなりキツかった」 そう言うと秋哉は、俺の肩に置いてた頭を上げて俺を見る。 「でも気付いたんだ、誰に何を言われようと秋哉とは離れたくない。 秋哉は何もなかった俺に沢山のものを与えてくれた。俺からはまだ何も返せてないけど、"俺が"秋哉の側に居たい。ちょっと変かもしれないけど、俺は秋哉のお父さんに会えて良かったと思う。秋哉のお父さんに会えたから気付けた」 そう言うと、秋哉は驚いた顔をする。 その後、急に笑い出した。 「あの人に会ってそんな事言ったの緋桜が初めてだ。でも緋桜、返そうなんて思わなくていいよ、見返りを求めてる訳じゃない。俺はただ緋桜に側にいて欲しいだけ。あの人が他に何を言ったのかは知らないけど、緋桜は何も気にしなくていい」 「……うんでも、やっぱり俺も変わらなきゃいけないと思う。いつまでも秋哉に甘えてちゃいけない。すぐには無理だけど、少しずつでも変われたら…… いつかは、秋哉のお父さんも認めてくれたらいいな」

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