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第326話 バイト

俺が秋哉のお父さんに会ってから一週間が過ぎた。 また何かあるといけないからと言われて、学校以外、特に登下校の時は一人にならないように言われて常に秋哉と一緒に行動していた。 秋哉が無理な時は、佐々木さんが迎えに来てくれたりしていた。 でもあれから、秋哉のお父さんからの接触は無かった。 秋哉のお父さんが言ってたことは当然だと思う。 秋哉は今のままでいいって言うけど、今みたいに皆に守ってもらってばかりじゃ駄目だと思う。 どうしたらいいんだろう。 どうしたら俺は変われるんだろう。 「バイトでもしてみたらどうだ?」 この一週間、ずっと考えていて煮詰まってた俺を見かねた佐倉先輩がどうしたのかと聞いてきて、俺は先輩に思ってる事を打ち明けた。 「……バイト?」 「中村の場合は圧倒的に世界が狭すぎるんだ。今までまともな人付き合いしてこなかっただろ?」 そう言われて、俺は頷く。 「バイトでもしてみたら、人付き合いも出来るし、色々変われるんじゃないか?」 バイトなんてしたことない。 今までしようなんて考えもしなかった。 「まぁ、秋哉がなんて言うかは分からないけど、一度世間に出るのも良いんじゃないか?」 『ちゃんと秋哉と相談しろよ』と先輩は言う。 「……俺に出来ますか?」 「それは中村次第だな。やる気があるなら、俺が紹介してやるよ」 「……どんなバイトなんですか?」 そう聞くと、先輩はニヤッと笑った。

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