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第328話

(秋哉side) 緋桜がバイトをしたいと言い出した。 どうやら佐倉先輩の入れ知恵らしい。 正直、緋桜がバイトをするのは反対だった。 どんなバイトをするにしても、不特定多数の人と接することになる。 変わってきてるとはいえ、人と接することが苦手な緋桜が心配だった。 ただ緋桜の言葉は探り探りだけど、その目は『やりたい』とはっきり言っていて、こんなの承諾する他なかった。 どんなバイトをするのか聞いてみると、先輩の叔父さんが経営してるカフェらしい。 先輩の紹介なら大丈夫かと思う。 緋桜は俺の了解を得た事で嬉しそうにしている。 でも緋桜がバイトをするってなると、俺の中で一つだけ問題があった。 「……ねぇ緋桜、バイトしてもいいけど、学校が休みの時は入れないで」 そう言うと緋桜は首を傾げる。 「休みの日まで緋桜と一緒に居られないのは嫌だ」 すごい情けない事を言ってるのは分かってる。 でも普段は学校でも会えるから我慢出来るけど、休みの日まで一緒に居られないのは寂しいと思った。 そう思って緋桜を抱き締めると、緋桜がクスッと笑う。 「まだ出来るかどうか分からないから、そんなに沢山入れるつもりはないよ。……それに、俺も秋哉と一緒に居られないのは嫌だ」 そう言って緋桜も抱き締め返してくれた。 「……何か俺、すごいカッコ悪いな」 ため息混じりにそう言うと、緋桜がまたクスッと笑う。 「そんな事ないよ?一緒に居たいって言ってくれて嬉しい」 そう言って緋桜はすり寄ってきた。

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