332 / 452

第329話

次の日、俺は先輩に秋哉の了解を得た事を話した。 先輩はさっそく叔父さんに連絡をして、次の休みの日に店まで行くことになった。 そこで先輩の叔父さんに会ってOKならその店でバイト出来る。 先輩曰く、大丈夫だろうと言っていた。 やりたいと言ったのは俺だけど、こうもトントン拍子に決まると不安になってくる。 本当に俺に出来るのかな……… 次の休みの日、秋哉と佐倉先輩と一緒にその店に向かっていた。 佐倉先輩は俺が紹介したからと言って着いてきてくれた。 先輩の叔父さんの店は学校から歩いて15分くらいの場所にある。 家からは30分くらい掛かるってことで佐々木さんが車を出してくれた。 ………どうしよう、すごく緊張してきた。 まだ働く訳じゃないないのに、ただ店に行くだけなのに……… 店が近付くにつれて、緊張がピークに達する。 俺はなんとか落ち着こうと深呼吸をしてみるけど、あまり効果はない。 どうしよう……早く落ち着かなきゃ。 そう思うと余計に緊張して軽くパニックになってくる。 その時、ギュッと手を握られて思わず体が跳ねた。 「緋桜、大丈夫?」 そう言いながら秋哉が覗き込んできた。 秋哉の顔を見ると、さっきまでパニクってたのが嘘のように気持ちが落ち着いた。 見ると車は路肩に停まっていて、佐々木さんも佐倉先輩も俺を見ていた。 俺の様子がおかしい事に気付いた秋哉が車を停めたらしい。 「……ぁ……ごめん…」 そう言って謝ると秋哉が心配そうに見てくる。 「無理そうなら今日は止めとこうか?」 秋哉にそう聞かれて、俺は首を振った。 「……大丈夫」 ここで行くのを止めたら、多分この後も行けなくなる。 そう思った。

ともだちにシェアしよう!