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第330話

俺が落ち着くのを待って、再び車が発進する。 先輩の叔父さんの店まではあと10分くらいで到着する。 俺のせいで当初の予定よりかなり遅れてしまった。 先輩の叔父さんも待たせてしまって申し訳ない。 そんな事を考えていると、思ったより早く店の前に到着した。 俺は窓の外を覗いて店を見る。 「緋桜、大丈夫?行けそう?」 店を眺めていると、秋哉が少し心配そうに聞いてくる。 あれからずっと秋哉が俺の手を握っててくれた。 そのお陰で幾分か緊張が紛れていた。 でも、いざ店を目の前にすると、また緊張が甦ってくる。 「………大丈夫」 そう言って深呼吸をすると、意を決して車を降りた。 店の名前は『cafe ノワール』 木の柱が特徴的な建物で落ち着いた雰囲気のカフェだ。 ふと入り口を見ると『close』の札がかかっていた。 「……先輩、休みみたいですけど、良かったんですか?」 俺がそう聞くと、先輩は『あぁ』と頷く。 「叔父さんには中村の事情は話してあるから、休みにしたんだろ」 『誰も居ない方がお前も落ち着くだろ』と先輩は言う。 俺のせいで店まで休みにしたんだ。 なんか益々申し訳ない。 そう思うと、だんだん気持ちが沈んでいく。 そんな事を考えているとポンと頭に手を置かれた。 見ると先輩が微笑んでる。 「大丈夫だからそんな顔をするな」 そう言って先輩はワシャワシャと俺の頭を撫でた。 「叔父さんは他のバイトの面接とかでも店を休みにするんだよ。 その方が自分も落ち着いて話せるからって」 そう言いながら、先輩は躊躇なく店の中に入っていく。 「叔父さーん、居る?」 先輩は中に入ると、店の奥に向かって声を掛ける。 「お、来たか」 しばらくすると、そう言って奥から30代くらいの男の人が出てきた。

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