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第341話

秋哉が来てると聞いて店の方に行くと、秋哉はカウンターに座ってコーヒーを飲んでいた。 多分高橋さんが出したんだろうな。 「秋哉」 俺が秋哉の名前を呼ぶと、こっちに気付いた秋哉がニコッと笑う。 「緋桜、お疲れ」 「どうして秋哉がここに?」 「そろそろ終わる頃だと思って迎えに来た」 「………別に良かったのに」 さっきまで疲れたって思ってたのに、秋哉の顔を見たらそれがなくなったような気がする。 「……それって、高橋さんが入れてくれたの?」 俺がコーヒーを指差して聞くと秋哉が頷く。 「待ってる間どうぞって」 「良かったら、緋桜くんにも入れてあげるよ?」 といつの間にか後ろに居た高橋さんが言う。 それに気付かなかった俺は、びっくりして体が跳ねた。 「ごめん、驚かせたね」 そう言って高橋さんは申し訳なさそうに笑う。 俺はそれに対して首を振った。 「だ、大丈夫です」 そう言うと、高橋さんはニコッと笑った。 「で?緋桜くんもコーヒーいる?」 「…ぁ……いや、俺は……」 「ん?」 もう店は終わってるし、俺の為にわざわざ入れてもらうのは申し訳ないと思って断ろうとすると、高橋さんがじっと見てくる。 「…………いただきます」 とても断れる雰囲気じゃなくて、俺はコーヒーの入れてもらうことにした。 「了解!」 俺がそう言うと、高橋さんは嬉しそうに笑ってカウンターの奥に入っていった。 俺はため息をつきながら秋哉の隣に座る。 秋哉は俺たちのやり取りを見て、クスクスと笑っていた。

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