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第342話
俺の為にとコーヒーを淹れ始めた高橋さんに目を奪われた。
今日知ったこと、この店では数種類のコーヒーがあって、高橋さんはドリップ式だったり、サイフォンを使ったりとコーヒーに合わせて淹れ方を変えてる。
そこは高橋さんのこだわりらしい。
この店自慢のブレンドはドリップ式が最も香りが引き立つって高橋さんが言ってた。
そう言うだけあって、高橋さんがコーヒーを淹れ始めると、辺りにフワッとコーヒーの良い香りが立ち込めた。
「そういえばコーヒーを淹れるところって、ちゃんと見たことなかったな」
俺が高橋さんのコーヒーを淹れる姿に見入ってると、秋哉がボソッと呟く。
言われてみれば、こんなしっかり見る事なんてなかなか出来ないかも。
「………俺にも、淹れられるかな?」
「緋桜なら出来るんじゃない?」
『俺にもあんな風に淹れられたら』と考えてると、思ってたことに秋哉から返事が返ってきてびっくりした。
「え?何で俺が考えてること……?」
そう聞くと、秋哉はきょとんとした後笑い出した。
「もしかしてさっきの無意識?」
そう言って笑う秋哉に、俺は首を傾げる。
「緋桜、声に出してたよ?」
そう言う秋哉に、俺は意味が分からなくて少しの間思考が停止した。
………思ってたこと……声に、出てた?
秋哉が言った意味が分かると、途端に顔が熱くなった。
まさか声に出てるとは思わなくて、俺は俯いてしまった。
その間、秋哉はずっと笑っていた。
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