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第343話

その後高橋さんにも『良かったら淹れ方教えるよ?』と言われて、高橋さんにまで聞かれてたと分かると更に恥ずかしくなった。 でも高橋さんの出してくれたコーヒーはやっぱり美味しくて、俺も淹れられたらなと思った。 コーヒーを飲み終えて、秋哉と店を出る。 店を出て少し離れたところに車が停まってて、秋哉から佐々木さんがずっと待ってたと聞いて慌てた。 言ってくれれば、コーヒーを飲まずにさっさと帰ってきたのに。 佐々木さんに待たせたことを謝ると、佐々木さんは笑って許してくれた。 秋哉が迎えに来てくれたってことは、当然佐々木さんも一緒で、それに気付けなかった俺も俺だ。 そう思って、俺は少し項垂れた。 「で、どうだった?バイト初日は」 車の乗ると秋哉がそう聞いてくる。 「……疲れた」 「ははっ!慣れないことしたからね」 そう言って秋哉は笑う。 でもこれくらいで疲れたなんて…… そう思っていると、ポンと秋哉の手が頭に置かれた。 「初日なんだから仕方ないよ。緋桜はゆっくり慣れていけばいい」 秋哉にそう言われて、俺は小さく頷いた。 「他は?」 「え?」 「他は何か問題はなかった?」 そう聞かれて、俺は少し考えた。 考えていると、ふと青木さんが浮かんだ。 秋哉に話すことでもないとは思ったけど、俺は青木さんのことを秋哉に話した。 「……もしかして、柱の影からこっちを見てたのがそうかな?」 「え?」 青木さんが見てたの? 「確かにあの感じは、緋桜は苦手かもね」 秋哉にそう言われて、俺は俯いてしまう。 「大丈夫?続けられそう?」 そう聞かれて、俺は少し考えた後頷いた。 確かに青木さんは少し怖いって思うけど、それを理由に辞めたくはなかった。 それに今は青木さんのこと、知らないから怖いだけで、もっとちゃんと青木さんの事を知れば平気になるかもしれない。 「……大丈夫」 そう言うと、秋哉からクスッと笑い声が聞こえた。 「うん分かった、頑張って」 そう言って秋哉は頭を撫でてくれた。 「でも、何かあったら高橋さんにすぐに言うこと!」 『分かった?』と少し強めに言われて、俺は頷いた。

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