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第344話

(高橋side) 明日の仕込みを済ませて一息つく。 その時携帯が鳴って、ディスプレイには『蒼』と表示されていた。 「もしもし?」 『あ、叔父さんお疲れ~』 蒼の軽い受け答えに思わず笑ってしまう。 「どうした?蒼から電話なんて珍しいじゃないか」 『ん~?どうだったかなと思って』 「緋桜くんのことかな?」 そう聞くと、蒼は『うん、まぁ』と言葉を濁す。 「いやに後輩思いじゃないか」 『いや……俺が紹介したし、気になって』 とゴニョゴニョと話す蒼に笑ってしまった。 「何も問題はなかったと思うよ。でも今日が初日だからね、流石に疲れたんじゃないかな」 『まぁ、あいつは接客なんてしたことないだろうしな』 そう言って蒼はクスクスと笑っている。 『で、他は何もなかった?』 「大丈夫だと思うよ……あ、ただ………」 『何?』 「緋桜くん、どうも青木くんのことが苦手みたいなんだよね」 『青木?……青木って確かあの目付きの悪い奴だったよね?』 そう言う蒼に、思わず苦笑が漏れる。 「いい子なんだけどね」 『中村、あいつのこと怖がってるの?』 「何かビクついてはいたかも」 そう言うと、蒼は黙ってしまった。 「蒼?」 『あ、ごめん。 ……うーん、大丈夫だとは思うけど、ちょっと様子みててあげて?』 その後『何かあったら連絡して』と言って蒼は電話を切った。 俺は切れた電話をしばらく眺めていた。 蒼が後輩を紹介してきた時、ずいぶん可愛がってるんだなとは思ったけど、どうやら別の理由もあるみたいだな。 木崎くんもやたらと緋桜くんの事を気にかけてるみたいだったし、緋桜くん自体訳ありってことろだろうな。 その理由は蒼も話たがらないし、しばらくは様子見なか。 ……これは、ちょっと大変なことを引き受けちゃったかな。 そう思って、俺は苦笑が漏れた。

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