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第346話

(秋哉side) 「どれどれ?」 『何が違うんだろう?』と緋桜が悩んでると、その後ろから明日の仕込みを終えた高橋さんがコーヒーの入ったカップに手を伸ばす。 それを一口飲んで『うーん』と唸る。 「…蒸らしが足りないのかも」 「蒸らし?」 そう言いながら緋桜は首を傾げる。 「最初に蒸らすでしょ?その蒸らし時間が短いのかもね」 「でも、言われた通りにやりましたけど……」 「その時によって時間を変えるんだよ」 「……難しいです」 そう言って緋桜はしょんぼりしてしまった。 コーヒーを淹れるだけでも奥が深いらしい。 その思いながら俺は緋桜の淹れたコーヒーを飲む。 「これはこれで美味しいと思うんだけどな」 そう言うと、緋桜は複雑そうな顔で見てくる。 緋桜の中では納得がいってないらしい。 まぁ緋桜の目指す味が高橋さんの淹れたコーヒーだから納得出来ないのは分かるけど。 「こればかりは自分で感覚を掴まないと難しいかもね。何回も試行錯誤するしかないよ」 そう言って高橋さんが笑う。 「緋桜くんは飲み込みは早いから、コツを掴めばすぐに出来ると思うよ。 さぁ!もう遅いし、今日はここまでにしといたら?」 高橋さんにそう言われて、緋桜は頷いた。 緋桜は使っていた器具を片付けて、俺はその間に佐々木を呼ぶ。 その時、ふと視線を感じた。 見てみると青木がいた。 「……?」 そういえば、ここに来るときはいつも居るような気がする。 それも接触してくる訳じゃなくて、離れた場所から見てることが多い。 緋桜も青木のことはまだ慣れないって言ってたし、ちょっと注意してた方がいいか。 「秋哉、お待たせ」 そんな事を考えていると、片付けを終えた緋桜がそう言って駆け寄ってくる。 でも今は、緋桜が楽しそうだからそれでいいか。 「帰ろうか」 そう言うと、緋桜はニコッと微笑んで頷いた。

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