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第347話
出勤日、俺はスタッフルームで制服に着替えて店に出る。
俺は柱の影から店の様子を伺った。
今居るお客さんは5組。
女子高生グループが3組と年配の人が一人とサラリーマン風の人が一人。
年配の人とサラリーマン風の人はカウンターに座っていて、女子高生たちはそれぞれテーブルに座ってお喋りしていた。
俺がバイトを始めた時はお客さんが来るか来ないかだったのに、最近では来る度にお客さんが増えたような気がする。
お客さんが来てくれるのは良いことなんだけど、何故か女の人が多いと思うのは気のせいなのかな。
あ、でも、ここは元々女の人受けが良さそうだから、女の人が増えてもおかしくないのか?
「緋桜くん、お疲れ様」
そんな事を考えながら店の中を見ていると、高橋さんに後ろから声をかけられた。
俺は驚いて体が跳ねた。
そんな俺を見て高橋さんはクスクス笑う。
「ごめんごめん、緋桜くんに声を掛けるときは前からじゃないと駄目だったね」
そう言う高橋さんに、俺は首を振る。
「いえ、大丈夫です……すいません」
俺がいちいち驚いてるから、高橋さんに気を使わせちゃってるな。
そう思って俯くと、高橋さんはまたクスクスと笑う。
「大丈夫だよ。ゆっくり慣れればいいんだから」
そう言われて、俺は頷いた。
「それに、緋桜くんのお陰でお客さんも増えたから俺は感謝してるよ?」
そう言う高橋さんに、俺はハテナマークが浮かんだ。
高橋さんに迷惑は掛けてても、感謝されるような事なんてしてない。
「俺、何もしてないですよ?」
そう言うと高橋さんは笑っていて、俺は更にハテナマークを浮かばせた。
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