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第349話

すぐ横でバンッと音がして、俺も女子高生たちも驚いて体が跳ねた。 その拍子に俺を掴んでた彼女たちの手が離れる。 「すいません。まだ仕事中なのでそういうのは止めてもらえますか?」 見ると、青木さんがそう言って彼女たちを見下ろしていた。 青木さんにそう言われて、彼女たちも素直に引き下がる。 それを見て、青木さんは『来い』と言って俺の腕を引っ張った。 ……これって、助けてくれたのかな? 「あ、あの……ありがとう、ございます」 俺がそう言うと、青木さんがピタッと止まって俺をじっと見てくる。 俺は思わず目を逸らしてしまった。 その後青木さんからため息が聞こえてきて、青木さんは俺から離れていった。 「緋桜くん、大丈夫?」 その後すぐ、高橋さんがそう言って駆け寄ってきた。 「え…ぁ……大丈夫、です」 俺がそう言うと、高橋さんはホッと息を吐いた。 青木さん助けてくれたのに俺、目逸らしちゃって悪い事したな。 そう思って、俺は少し離れた場所にいる青木さんを見る。 青木さんの事、これまででいい人だってことは分かってる。 ただ、怖くないって分かってるのに、あの目だけはどうしても見られない。 青木さんに失礼だとは思う。 でも、どうしてもあの突き刺すような視線が怖いと思ってしまう。 青木さんに声を掛けられると、体が強張ってしまう。 どうしたらいいんだろうと思って、俺はため息をついた。

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