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第351話
高橋さんが青木さんはまだスタッフルームに居るって言ってた。
俺はそれを確認するために、そっとスタッフルームを覗いた。
中を見ると、青木さんが着替え終えて携帯を弄っていた。
今声かけてもいいのかな?
そう思ってドアの隙間から見ていると、俺に気付いた青木さんとバチッと目が合った。
その瞬間、体がビクッと跳ねる。
俺は思わず、ドアの影に隠れてしまった。
どうしよう。
お礼に来たのに隠れちゃった。
「何してんの?」
そんな事を考えているとそう声がして、見るとすぐ近くに青木さんがいた。
じっと見てくる青木さんに、俺は目を逸らしてしまう。
やっぱりこの目、怖い。
でもこれ渡さなきゃ。
高橋さんにも協力してもらったのに。
「…あ、あの、これ…」
俺は意を決して、持っていたカフェオレとケーキの乗ったトレイを青木さんに渡した。
「……これは?」
「……今日の、お礼です……助けて、もらったから」
「……別に良かったのに」
そう言う青木さんの声が少し優しくなったような気がした。
恐る恐る見ると青木さんは微笑んでいて、今までの突き刺すような視線が消えていた。
俺は何故か、目が離せなかった。
「どうかしたのか?」
そう言って、青木さんが俺の顔を覗き込んでくる。
その目はいつも通りに戻っていて、俺はまた目を逸らしてしまった。
そんな俺を見て、青木さんがため息をつく。
「お前さ、いい加減にしろよ?いつまでもビクビクと」
そう言う青木さんに、じっと見られて体が強張る。
「……ごめん、なさい」
俺が謝ると、青木さんからまたため息が聞こえてきて、
「もういい」
そう言われて、体がビクッと跳ねた。
青木さんはそのまま、スタッフルームに入っていってしまった。
青木さんに嫌われた。
そう思うと、微かに涙が滲んでくる。
俺はそれをグッと我慢して高橋さんの所に戻った。
高橋さんの所に戻ると秋哉がいて、俺は堪らず秋哉に抱きついた。
ただお礼をしたかっただけなのに。
なんで上手くいかないんだろう。
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