356 / 452
第352話
(秋哉side)
いつも通り店が終わる頃を見計らって緋桜を迎えにいく。
店に入ると、カウンターに高橋さんが居るだけで緋桜の姿は見当たらなかった。
「やぁ木崎くん、いらっしゃい」
俺に気付いた高橋さんが声を掛けてくる。
「お疲れ様です……緋桜は?」
「緋桜くんなら今……」
高橋さんから、今日緋桜が女子高生に絡まれて、それを青木が助けた事を聞いた。
今緋桜はそのお礼の為に青木の所に行ってるらしい。
青木の事苦手なくせに、そういう所は律儀というか何というか。
しばらくすると、緋桜が戻ってきた。
ただ、どこか様子が変だった。
緋桜は俺の前まで来ると、いきなり抱き付いてきた。
「緋桜!?どうしたの!?」
緋桜は普段人前ではあまりこういうことしないから、流石の俺も驚いた。
「緋桜、何かあった?」
そう聞いてみるけど、緋桜はギュウっとしがみつくだけで反応がない。
「……今日はもう帰った方がいいね」
緋桜の様子がおかしいのに気付いた高橋さんがそう言う。
俺はそれに頷いた。
「緋桜、帰ろ?」
そう言うと、緋桜はゆっくり離れる。
その顔は今にも泣きそうだった。
「高橋さんすいません。緋桜の荷物を持ってきてもらっても良いですか?」
俺がそう言うと、高橋さんは頷いてスタッフルームに入っていった。
緋桜はいまだに泣きそうな顔で俺の服をギュッと握っている。
これは、青木と何かあったかな。
「木崎くん、これ緋桜くんの荷物」
そう言って高橋さんが持ってきてくれた荷物を手渡してくる。
「ありがとうございます」
俺はそう言って荷物を受けとる。
「木崎くん、緋桜くんは大丈夫かな?」
高橋さんにそう聞かれて、俺は緋桜をチラッと見た。
「…多分、大丈夫だと思います」
俺がそう言うと、高橋さんは頷いた。
高橋さんと少し話したあと、俺は緋桜の肩に持ってきてもらったコートを掛ける。
「じゃあ行こうか?」
そう言うと、緋桜は小さく頷いた。
ともだちにシェアしよう!