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第354話
(秋哉side)
『何があった』と聞くと、緋桜は俺を見た後また俯いてしまう。
「………青木さんに……もういいって、言われた」
そう言って緋桜はまた膝を抱えてしまう。
「……そうか」
緋桜にとって『もういい』って言葉は、人が自分から離れていく時に言われる言葉。
俺も前に同じ事を言って、緋桜が離れていきそうになったことがあった。
正直、あの時はかなり焦った。
「本当は、もっとちゃんとお礼言いたかったのに、俺、いつまでも怖がって……
こんなんじゃ……嫌われても、仕方ないよね」
そう言う緋桜の目にじんわりと涙が浮かぶ。
「緋桜はどうしたいの?」
「え?」
「緋桜は青木とどうなりたいの?」
そう聞くと、緋桜は考えだす。
「……出来るなら、仲良くなりたい。
あの目は、怖いけど……青木さんがいい人なのは分かってる」
緋桜はそうポツポツと話す。
本当のところは、緋桜を泣かせるような奴にあまり近寄っては欲しくないけど。
「なら、もう一度話さなきゃね」
「……話す?」
「そう、もしかしたら俺たちの時みたいに勘違いかもしれないでしょ?だから、ちゃんと話さなきゃ」
『ね?』と言うと、緋桜は頷いた。
その後、緋桜は俺が淹れたコーヒーを飲む。
もう冷めてるから淹れ直そうかと言ったら、緋桜は『大丈夫』と言って飲み始めた。
その姿はいつもの緋桜と変わらなくて、どうやら立ち直ってくれたようで俺はホッと息を吐いた。
緋桜が立ち直ってくれたのは良いけど、青木に対してはちょっと思うところがあるんだよな。
そう思って俺は緋桜をチラッと見る。
何もなければ良いんだけど………
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