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第357話
(秋哉side)
席について店の中を見回す。
学校帰りなのか、やたらと女子高生が目立つ。
「やっぱ噂になってるみたいだな」
佐倉先輩がそう呟く。
見ると、彼女たちの視線は殆どが緋桜に向けられている。
「中村は週1しか店に出ないから、客の中でレア度が増してるみたいだな」
そう言って先輩は笑う。
「先輩たち、何にしますか?」
緋桜が注文を聞くと、先輩たちはメニューを見て悩み出す。
「私、チョコレートパフェとカフェオレ!」
と真っ先に宮藤先輩が注文する。
「俺は、ココアとチーズケーキをお願いします」
と日向先輩が続けて注文する。
日向先輩はこう見えて、コーヒーが飲めない。
だからこういうカフェに来たときは、コーヒー以外のものを注文する。
生徒会室にも、コーヒーの他にココアだったりジュースだったり、日向先輩用の飲み物が常備されている。
「俺はブレンドね!」
と佐倉先輩が注文する。
「ねぇ、中村が淹れてよ」
注文用紙に記入してた緋桜に先輩が突然そう言い出した。
「え?」
緋桜が驚いてその手を止める。
「コーヒー淹れるの練習してるんだろ?俺、中村が淹れたコーヒーが飲みたいな」
そう言って先輩はニコッと笑った。
「い、いやでも……まだ人に出せるようなものじゃないですし」
と緋桜は慌てる。
「大丈夫だって!中村の淹れるコーヒーは美味しいって秋哉にも聞いてるし」
そう言って笑う先輩に、困った緋桜はカウンターにいる高橋さんに視線を向けた。
俺もそれに釣られて高橋さんを見ると、こっちの話が聞こえてたようでOKサインを出していた。
「ほら、叔父さんのOKも出たしさ」
と先輩は嬉しそうに言う。
「………分かりました」
悩んだ末、緋桜も観念したみたいで、ため息をつきながら頷いた。
「……秋哉はどうする?」
と緋桜が少し気落ちした感じで聞いてくる。
俺は思わず苦笑が漏れた。
「俺もブレンドでいいよ……ねぇ緋桜、俺のも緋桜が淹れてくれる?」
「…え?」
「俺も緋桜が淹れたコーヒーが飲みたい」
そう言って笑い掛けると、少し悩んだ後頷いた。
「…うん、分かった」
そう言って緋桜は微笑んだ。
その瞬間、他の客がザワついた。
緋桜もそれに驚いてたけど、自分が原因だとは思ってないだろうな。
そう思うと、俺は思わず笑ってしまった。
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