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第358話 嫉妬
初めてあいつを見たとき、何とも言えない感覚になった。
その感覚が何なのか、俺には分からなかった。
目の前に居るそいつは、ビクビクとして俺から目を逸らす。
そんなのはいつもの事で、最初はこいつもかと思う程度だった。
でも何故か、目が離せなかった。
中村 緋桜、こいつには不思議な魅力があった。
多分俺は、それに惹かれたんだと思う。
こいつの周りには常に誰かしら居た。
同じ学校の奴に、マスターも気にかけてるみたいだった。
それに木崎とかいう奴。
木崎は中村がここに来るときは必ず居る。
帰りは必ず迎えに来て、それ以外に来るときも送り迎いをしてるみたいだった。
友達……いや、それ以上の関係。
俺はその存在に腹が立って仕方なかった。
中村はあいつに笑顔を見せる。
初めて見るあいつの笑顔。
俺には、絶対に向けられない笑顔。
「……俺には怯える癖に。
あいつには笑い掛けるんだな……」
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