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第362話

スタッフルームを覗くと、青木さんが帰りの支度をしていた。 「……あ、あの………」 俺が声を掛けると、青木さんがこっちを見る。 「何?」 その冷ややかな声に体が震えた。 どうしよう、ずっと話をしたいって思ってたのに、いざ話そうとすると言葉が出ない。 「……用がないなら帰るから」 そう言って青木さんがスタッフルームを出ていこうとする。 「ま、待って」 俺は出ていこうとする青木の服を、思わず掴んだ。 ハッとして慌てて手を離す。 「す、すいません」 何してるんだろう。 こんなことしたらもっと嫌がられるのに。 秋哉に言われて青木さんと話してみようと思ったけど、これって俺の自分勝手な考えなのかもしれない。 青木さんが俺の事を嫌いなら、俺の行動は青木さんにとって迷惑でしかない。 やっぱり、青木さんとは距離を置いたほうがいいのかな。 「~~~~」 そんな事を考えていると、青木さんが何かボソッと呟いた。 「え?」 何て言ったのか分からず、俺は青木さんの顔を見るために上を向いた。 その瞬間、唇に何か押し付けられた。 俺には何が起きたのか分からなかった。

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