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第363話

(青木side) マスターの計らいなんだろう。 中村も交えて、あの一角だけが別空間みたいになってた。 あれだけ顔の良い奴らが揃えば注目されるのは当然だ。 店にいる客、特に女の客はくぎ付け状態だった。 中村はケーキを食べながらあいつらと楽しそうに話したりしている。 時折笑顔も見せて、俺の見たことのない表情ばかりあいつらに向ける。 俺はそれを見るたびにイライラが募っていった。 店が終わってスタッフルームで帰り支度をしていると、中村が声を掛けてきた。 ビクビクとしながら、けして俺を見ようとはしない。 ただ俺が出て行こうとすると引き止める。 イライラが募る。 何で怯える。 何で俺にはあの表情を見せない。 何であいつばかり。 何で何で何で…… 「何で俺を見ない」 無意識だった。 中村が俺を見た瞬間、俺の中で何かが弾けた。

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