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第364話

唇に何かが押し付けられて、俺は反射的にそれを押し返した。 押したことで唇に押し当てられていたものが離れる。 俺は無意識に口を押さえた。 何、今の…… 唇に何かが押し付けられて…… 青木さんの顔が目の前にあって…… 突然のことで、俺は頭が働かなかった。 俺が動けずにいると、青木さんに腕を掴まれる。 グッと掴まれて痛い。 「っ!青木さ、やだっ」 掴まれたことろが痛くて、俺は青木さんの手をなんとか外そうともがく。 でも青木さんの方が力が強くて、それが叶わない。 「…やだっ、離して……」 「何で!」 俺が離れようとすると、青木さんはそう声を荒げて俺の体を引き寄せる。 「何で俺を見ようとしない!何であいつばかり!」 ………青木さんは何を言ってるの? 嫌だ……怖い。 「嫌だ……青木さん、離し………っ!」 俺が青木さんを押し返そうとしてると、また唇に何か押し付けられた。 今度は何をされてるのか分かる。 その瞬間、ブワッと身体中に悪寒が走った。 「っ!……っ嫌だ!」 俺は力一杯青木さんを押す。 その反動で青木さんが離れた。 青木さんが俺を見据える。 俺はその目が堪らなく怖かった。

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