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第373話
(秋哉side)
「秋哉さんはコーヒーでいいですか?」
自販機の前で飲み物を買おうとしてる佐々木がそう聞いてくる。
俺はそれに頷いた。
「高橋さんもコーヒーで良いとして、青木くんは……」
そう言って佐々木は青木の飲み物を悩んで指をボタンの前で行ったり来たりさせる。
…そう言えば、前に緋桜が青木の好みについて話してた気がする。
「………甘いやつ」
「え?」
「……前に緋桜が話してた。お礼の為に青木にカフェオレを淹れたって」
その時の事を思い出しながら佐々木に話すと、佐々木がクスッと笑った。
「…………なんだよ」
「いえ、じゃあ青木くんにはカフェオレを買っていきましょうか」
そう言って佐々木はクスクスと笑いながらカフェオレのボタンを押した。
飲み物を買い終えると、俺は自分の分と佐々木の分を持つ。
佐々木は高橋さんと青木の分を持って席に戻った。
「すいません、ありがとうございます」
佐々木が買ってきた飲み物を高橋さんの前に置くと、高橋さんはそう言って頭を下げる。
青木の前にも置くと、青木も軽く頭を下げた。
皆で飲み物を飲んで一息付く。
「……じゃあ話してくれるかい?」
佐々木がそう言って青木を見る。
佐々木が場を仕切ってくれるのは助かる。
俺だと感情的になってしまいそうだ。
佐々木もそれが分かってるから率先して動いてくれてるんだろう。
青木の話では俺たちの仲を見て、自分には向けられる事のない思いに嫉妬したらしい。
感情が爆発した青木は衝動的に緋桜にキスをした。
それが原因で緋桜があんなことになってる。
俺は話を聞いてるうちにまた怒りが込み上げてくる。
それを感じ取った佐々木に何度か宥められた。
話をしてるうちに、何か院内が騒がしくなってるのに気付いた。
看護師たちが慌ただしく走っている。
談話室にいた他の人たちも何事かとそっちを見ている。
「あ、いた!」
一人の看護師がそう声を上げて俺たちの方に向かってきた。
「木崎さん佐々木さん、中村さんがっ!」
それを聞いて、俺たちは病室に急いだ。
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